第69話 勝利!

 

 ………………ここから先、私はグリード王国代表騎士という肩書きを持ちながらも次元が違いすぎて見ることしか出来なかった。


 そう、私達が入っても邪魔だと判断してしまう程__



 「みや!今のうちに飛べなくしろ!」


 「わかったよぉ【風斬】っ」


 『みや』と呼ばれた少女は命令を聞くと大きな魔法陣を展開し、そこから圧縮された風の斬撃を繰り出す。


 「ーーーーーー!!!???!」


 その斬撃はクリスタルドラゴンの翼の根本を両断した。


 ……そう、両断したのだ……あのこの世のものじゃ到底破壊できないと思っていた硬い鱗ごと……


 【風斬】事態はグリードの上級魔法、だがその威力は明らかに改造されている。

 

 「これでもうこいつは飛べない、俺のレイピアはっ……と、ここにあったか」


 勇者は地面に刺さってるレイピアを持ち構え直した。


 あのクリスタルドラゴンを墜落させた一撃はレイピアでの攻撃!?

 見るからに普通のレイピア……どんな秘密があるんだ!?


 「みや、弱点は?」


 「ちょっと待ってねっ」  


 みやの目に紋章が浮かび上がり不気味に赤く光る。


 「かんりょぅ♪コアは頭の眉間の部分にあるよ、かなり大きぃけど手伝ぅ?」


 「手伝いなんていらない【武器召喚】をしてトドメを刺す!」


 【武器召喚】!?


 ま、まさかあの勇者、この短期間でその魔法を習得したと言うのか!?!?


 ギリッと歯が欠けた様な音が隣で聞こえ見るとクロエが口から血が出ながらも鬼の形相で勇者を見ていた。


 無理もない……武器召喚事態クロエの目指す頂の魔法。

 私以外に使える人が居るのを見るだけでも辛いだろう。


 「【武器召喚】!」


 少年は天に向かって力強く呪文を唱えると、金色の魔法陣が地上に煌めきを放ち、周囲に轟音を響かせながら衝撃波を巻き起こし、彼を神秘的な光に包み込む。


 そして、突如として現れたのは、高さ二メートルにも及ぶ壮麗な黄金のランスだった。

 その美しく複雑なシンメトリーな模様と、圧倒的な存在感は、まるで神話の中から飛び出したような壮観さだった。

 少年はそのランスを手に取り、その輝きに照らされながら、空高く舞い上がる!



 真っ暗な夜に、その輝きがもう一つの月のように輝き、闇夜を照らし出す……星空に輝く新たな星として輝きを放っているかのようだ。


 


 「これで終わりだぁぁあああああ!!!!」



 空から放たれた大きな黄金のランスが、クリスタルドラゴンの姿を目指して投擲される!


 リュウトの手から放たれたそのランスは、空中で輝く流れ星のように軌跡を刻みながら、その後方には巨大な竜巻が生まれ、その旋風が空を裂いた。

 そして、ランスがクリスタルドラゴンに接近するにつれ、その輝きはさらに増し、まるで太陽そのものが地上に降り注ぐかのような光を放った。


 「ーーーーーーーー!!!!!!!」


 ランスがクリスタルドラゴンの頭を貫き、その瞬間に爆発が起こり、まるで神々が地球を揺さぶるかのような衝撃が広大な地域に広がり、木々や岩が吹き飛ばされ、大地が震えた。



 土煙が晴れると、そこには元のレイピアを持った勇者とともに、【目撃護】で吹き飛ばされなかった私たち三人が立っていて……




 「これが……勇者の力……」






 ____そして、上半身が無くなったクリスタルドラゴンの死体が無様に転がっていた。








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