第67話 帰ったヒロユキ達
スロー村は騒がしく、ギルドも人手が足りていないので宿屋を借りてユキはヒロユキを看病しながら話を聞いていた。
「メルピグの異常個体ですか?」
「......そう」
ヒロユキの状態は命が助かったのも奇跡と言うほどヒドイ有り様だった。
「ルカおばさん…………」
「……ルカおばさん?」
「あ!何でもないです!さ、私たち《ゴールド冒険者》はやれることはもう無いんですからゆっくりしましょう!ギルドから支給してくれた《シクランボ》とかありますよ!赤くて甘くて美味しいんです!」
「......サクランボみたい」
「はい、あ〜んです!」
「…………」
「あ!無視しないでください〜」
クリスタルドラゴンの出現……だが、ヒロユキは動けなくなってるので何も出来ない。
「......」
「もしもーし?聞こえますか~?」
「......」
「あれ?ほんとに寝てます?」
「......」
実際、ヒロユキはウトウトしていて半分夢を見始めてる頃だった。
「……」
「……」
ユキも黙ると次第にヒロユキからスゥースゥーと軽いイビキが聞こえてきた。
「……」
「……す、少しなら」
ユキはヒロユキの寝顔に顔を近付ける。
そして______
「ヒロユキ!大丈夫か!」
誰かに勢いよくドアを開けられた。
「ひゃぅ!?」
変な声を出しながらユキはすぐさま体勢を整える。
「ヒロユキ!死んだのか!?」
「……うるさい、リュウト」
空気も読まずに扉を開けたのは【勇者リュウト】
その隣には紅い目とおしりの方まで長い艶やかな白い髪が印象的なユキと同じくらい幼い女の子が居た。
その女の子はヒロユキの視線に気付いたのだろう。
綺麗なお辞儀をしながら__
「初めまして、リュゥトの妻ですっ」
と、堂々と躊躇なく言い切った。
「ちょ!?」
「......おめでとうリュウト」
「おめでとうございます」
「二人して悪のりするなよ!?違うからな!同じパーティーメンバーの『みや』だ!」
「......なんだ違うのか」
「当たり前だろ!俺はアオイさん一筋なんだ!ってそんな事はどうでもいい!」
“アオイ一筋”その言葉を聞くと隣の子は少し複雑そうな顔をする。
「……リュウト、そう言うのは大声で言う事じゃない」
「え?どうしてだ?えーっと、ヒロユキその子は?」
「......パーティーメンバーのユキ」
「【勇者リュウト様】ですね?よろしくです!」
「よろしく!......ってどうしてその事を?」
「え、あ!えーっと、私はヒロユキさんのですね......」
「......ユキはグリード城から派遣された俺のお世話係もかねてる」
「あぁ、なるほど、それなら俺たちの事情を知ってるのか!」
「ふぅーーーーーーーーんっ?」
「な、なんでしょうか?みやさん」
みやは少し疑っているがそれ以上追求する気もないみたいだ。
「それよりヒロユキ!大丈夫か?お前がやられたって聞いて飛んできたぞ!」
「......そこまで仲良くなった覚えはない」
「相変わらずだな!まぁ冗談が言えるくらいなら大丈夫そうだな..................後は俺に任せろ」
「......任せるって?」
「クリスタルドラゴンは俺が倒す。」
「......」
「安心しろ?お前をこんな目にした奴は生かしておけねぇ、準備が出来たらすぐ出発する」
「......い、いや、俺は」
クリスタルドラゴンにやられた訳ではないと言おうとしたがリュウトは全く聞こうとしない。
「それ以上言わなくていい!安心しろ!男として当然の事だ」
「リュウト、ギルドの人が特別にクリスタルドラゴン討伐に行って良ぃって......ぃこっ」
「てわけだ!仇はとってくる!」
そういって二人はクリスタルドラゴン討伐に行ってしまった……
「行ってしまいましたね......」
「......台風みたいな奴だったな」
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