第47話 報酬は良いものを!

 

 「な、なんなんだあれ!?」


 ヒロスケと一緒に空から見える景色は今までのどの光景よりもファンタジーだった。


 先程まで俺たちが居た山の半分は崩れ落ち、そこから出てきたのは鱗の一つひとつがまるで宝石のように輝き、その美しいクリスタルの輝きが特徴的な巨大なドラゴン。



 ラスボス倒したら本当のラスボス登場みたいな!?


 心なしか真紅の宝石を閉じ込めたように輝く大きな目は俺とヒロスケを見ている気がする……


 「ど、どうするよ!あんなの絶対に無理じゃん!?」


 「クォ......」


 ヒロスケもあまりの規模の大きさに情けない鳴き声を出す。


 そんな事を言ってると俺の真似の方から声が聞こえだした。


 {奴隷No.35.ノルマ達成を確認したので転移を開始します}


 「んぇ?」


 「クォ?」


 その瞬間、突如俺たちの前に魔法陣が現れヒロスケは滑空状態のまま止まれずに突っ込んでいってしまう。


 「クォ!?」

 「ぐぎゃ」

 バキッ


 転移した先は小さな檻の中。


 当然勢いを殺してなかったので俺たち3人は檻の壁に衝突し痛い思いをしながら地面に着地した。


 …………と言うかリンから変な音聞こえたけどほんと大丈夫だよね?

 

 「こうして会うのは久しぶりですね、35番さん」


 そう声をかけてきたのは奴隷になって1番初めに会ったおじさん。

 つまりこの奴隷商のボス……今の俺のマスターと言う事になる。


 「久しぶり……です」


 「ふむ、敬語で話せる様になっているとは……教育が行き届いてよろしい」


 そりゃそうさ……今までここに居てわかってるけど下手な事で怒らせたら何されるか解らないからね。


 「まずはノルマ達成おめでとう」


 「僕が、ですか?」

 

 目的の【メルキノコ】は失敗に終わった。

 それなのにノルマ達成とは?どう言う事だろう?


 「えぇ、君が、ですよ」


 「???」


 「それよりも、頑張った君にご褒美を用意している」


 ご褒美?なんだろ?


 「これだ」


 檻に投げ入れられたのは何かを入れた麻袋。


 「開けてみたまえ」

 

 「こ、これは!」

 

 見るとそこにはあの懐かしき、お城から貰ったときの青い服が!


 え!?まじ?いいの?!


 「え!?まじ!?いいの!?」


 嬉しさ思わず心の声と現実の声がハモる。


 「もちろん、今日から君の物だ」


 「ありがとうございます!」


 俺はその場でボロ布切れ服を脱ぎ下着姿になり、ご褒美の服を着用して行く。

 

 あ、着て行く最中で解る……これ、暖かいやつやん。


 しかも足に靴まであるオプション付き!これまじ!?


 靴下をはいて靴をはくと今まで自分がどれだけの環境に居たのか……涙出てきちゃった。


 「うぐ……えぐ……」


 「おやおや、そんなに嬉しかったですか?」


 「ありがどうございまずぅ」


 もうダメ、涙止まらない。


 「よろしい、これからも精進する様に」


 「ばいぃ……」


 そのまま俺とヒロスケは檻から出され、その部屋を後にした__________



 ____________



 ________



 ____



 「…………あぁ、ご先祖様」


 立派な屋敷に豪華な部屋。


 その1番奥にある書斎に『女神の翼』の奴隷商ボスは座っていた。


 「ついにここまで来ました」


 机の上にはボロボロの日記。


 その日記を手に取り開く。


 「女神の魅了による“クリスタルドラゴンの復活”……全て『貴方』様のシナリオ通り……」


 そして“次で最後”のページを確認して日記を閉じ、自慢のシルクハットを被る。


 「さぁ、ついにこの時が来ました……会うのが楽しみです」



 シルクハットの男は通信魔皮紙を起動させ部下達に次の指示を出した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る