第46話 出来ることをしすぎた!


 「やっちまった……」


 とりあえず!逃げる!

 なんだよあれ!キモッ!なんかジ○リの作品にも居たよな!あんな奴!


 とにかくアイツの狙いは絶対俺だ!ここに居るとヒロユキが危ない!


 「ひええええええええええええ!!!」


 もう足がすくんで動けない状況から無理矢理全力で走ってるので足の感覚がおかしい!後でかすぎる胸が走るのに邪魔すぎる!


 走るたびにブルンブルン動いて千切れそうにいたい!もう胸を持ちながら走るしかないよこれ!


 メルピグがものすごい速さで此方に来ている。


 リンのあの速さでも化物級だったのに、普通の人間の脚力で逃げ切れるわけないよな!?早さの違いは車と人みたいな感じ!


 「はぁ……はぁ……」


 がむしゃらに走り続けたら、先は崖だった。

 いや、どこいってもこれなんだけどね!


 「映画とかだとタバコ吸って最後の時を迎える展開みたいな?」


 もう涙も出ない。


 先程で涙も尿も全部出したし、今度は自分が死を覚悟したからなのか賢者モードの様に落ち着いている……命張ったブラックジョークも出てるしね!


 追い詰めたと言わんばかりにメルピグから生えてきた触手がゆっくりと近づいてくる……くそ!


 もう下がれない!

 

 そして一本の触手が足に絡みつこうとしたので蹴り飛ばす!


 「そう簡単に捕まってたまるか!」


 だが、その一本を蹴飛ばしたのがよほど気に入らなかったのか今度は何十本もの触手が此方に向かってきた。


 「あ、終わった」






 これから食べられるかエロ同人みたいにヤられて俺の魂が殺されるかどちらにしろ死を覚悟したその時だった!!!
















 「クォォォォオオオ!!」









 俺は猛スピードで走ってきた魔物にパンティーのおしり部分を引っ張られそのまま何かのふわふわしたものの背中に乗った。




 その正体は__





 「ヒロスケ!?」


 ちなみに一瞬の出来事だったから感じなかったが、パンティーを咥えられて引っ張られた反動がジワジワと今来て股が痛い……て、そんな事より!


 「ヒロスケ!ありがとう!」


 「クォッ!」


 俺の窮地を救ってくれたのは相棒のベルドリヒロスケ!

 ヒロスケの羽の色も全体的に白だから雪に隠れてて気付くのが遅れたのだろう。


 「今までどこにいってたの?」


 「クォォ......」


 ヒロスケが申し訳なさそうにしてる。


 まぁでも……


 「恐いよね、魔物って」


 「クォ」


 「本当に……恐いよね」


 俺も先ほど体験した恐怖。

 長年平和ボケしてきた俺でさえ感じた恐怖なのだ、動物であるヒロスケは俺よりも敏感に感じ取っていたのだろう……


 「それを振りきってまで僕を助けに来てくれてありがとぅぅぅぎゅぅぅう!」


 「クォ!?」


 ヒロスケもう大好きチュッチュ!


 「さて!終わりよければ全てよし!ここから挽回だ!」


 「クオ!」


 「で!どうしよう!」


 「クォ!」


 触手メルピグはヒロスケに獲物を盗られたのが悔しいのかさっきより触手を増やしてそれを鞭のようにしならせ攻撃してくる。


 リアルつるの鞭って奴か!


 それをヒロスケは俺を乗せたまま避けてくれる。

 思いっきり羽を掴んで振り落とされない様にしてるのがやっとだ。


 「まずはリンを安全な所まで運ぼう!」


 「クォ!」


 ヒロスケはスピードを上げてリンの所へ走っていく!

 みるみるうちにリンの身体が近くなっていき!


 「あ……」


 近づいてきて思った……これ、どうしよう?


 流石にスピードを落とすと後ろのデカい奴に追いつかれるし、かと言って行き際にキャッチしても鎧で重くなってる男1人をヒロスケの背中に持ち上げるのは今の俺では無理だぞ?



 うーん…………


 …………!!



 そうだ!



 「ヒロスケ!リンを空中に蹴りあげて!」 


 「クォ!」


 そのままスピードを落とさずにサッカーボールを斜め上に蹴る感覚でヒロスケはリンを蹴り上げた。


 バキッと何かすごい音がした後、リンの身体は宙を舞う。


 この時幸いにもリンの鎧はボロボロだったので今の衝撃で砕け散った!好都合!これで!


 「そのままリンの着地点に走って!僕がキャッチするから!」

 

 「クォ!?」


 ヒロスケは作戦の詳細を聞いてなかった。


 と言うか言ってなかったので俺が悪いが、リンをかなり飛ばしてしまったので焦ったように全力疾走する。


 「後……少し!」


 そうあと少し、後少しなのだが!


 俺もヒロスケも飛んでるリンを見ながら走っていたおかげで下を見ていなかった!


 「ヒロスケストップ!!!!」


 「クォ!?」


 ヒロスケは急に止まれずそのまま崖へ俺と一緒にゴー!


 じゃねーよ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!


 ジェットコースターでお尻が浮く感覚が続いてる!


 「うわぁぁぁあ!!!もうだめだぁ!」


 「クォォォォオオオ!!!!」


 あ、やばい、走馬灯見える。



 あぁ前にもこんな感じで落ちていく感覚あったな?



 あの時はゴリさんがキャッチしてくれたっけ……




 ……それだ!!!ナイス走馬灯!!!




 「ヒロスケ!こっちを見て!」


 「クォォォォオオオ!くぉ!?」



 俺は空中で手でハートを作り、ヒロスケに向かって。



 「『魅了』!」


 .なんだよ、このもえもえキュンポーズ。


 「クォ!」


 その瞬間ヒロスケは顔に迷いがなくなった!様に見えた!


 そして、その立派な白い翼を広げて__


 「クォォォォオオオ!」


 そのままヒロスケは空を飛んで俺を背中にキャッチした!


 「よし!やっぱりあのお父さんの息子だね、ヒロスケもやればできる子!」


 「クォ!」


 走馬灯で見えたのはあのヒロスケの卵を奪還するときの記憶。


 俺が『魅了』を使ったとき、ベルドリが飛んでいたのが見えた、つまりあれが親ならヒロスケもその才能をもってるのだ。


 ヒロスケは空を飛びながら此方をチラチラみてる、なんというか……熱いまなざしな気がするのは気のせいか?


 そのまま、落ちてるリンを回収!


 「キャーーッチ__ってゴフッ!」


 キャッチしたが向きが逆になっていてリンの股間が俺の顔にダイレクトアタックしてきた。


 「むごむごご!」


 そのまま前のめりに姿勢を正し俺の身体とヒロスケの背中でサンドイッチにして固定する。


 なので自然と俺の股間はリンの顔に、リンの股間は俺の顎の下だ。


 意外とこの向き体勢の方がお互いの凹凸がハマりがっちりと固定できた!


 おう!言っとくが俺は男だからな?そこんとこ忘れんな!


 そのままヒロスケは高く飛びメルピグの攻撃範囲から外れた。


 「フシュルルルル」


 下の触手メルピグが悔しそうに見ている。



 ざまーみろ!



 勝利を確信した瞬間____



 「え!?」


 「クォ!?」



 山頂の地面が崩れ始めメルピグは落ちて行き____




 崩れた地面から現れたのは大きなドラゴンの頭。


 その頭は透明で輝くクリスタルのような素材でできており、光が反射して幻想的な輝きを放ち、まるで宝石のような眼がついているかの様だった。












 ......え...まだなんかあるの...?





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