第48話 希望が絶望に変わる瞬間!?


 「〜♪」


 「うるさいぞ!」


 「ひ!ごめんなさい」


 あまりにも気分が良く、口笛を吹いて歌っていたら案内してくれてる看守に怒られちった、てへっ。


 服が暖かい!


 俺は服をつまんだりシャカシャカして報酬を堪能していた。

 この地肌と服のすれる感覚。

 周りの冷たい風をシャットアウトしてくれてる感覚。


 ……たまんねぇ……



 今思えば散々な目だった…………


 【勇者】として召喚され。

 でも女になっていて。

 いざ出発すると襲われ奴隷に。

 奴隷生活は最悪……

 

 …………………………





 「むわぁぁあ!」





 感情が抑えられなくなってヒロスケに抱きつく。


 「クオ!?」


 最初はびっくりしたようだがそのあと俺にスリスリしてきた。


 「唯一奴隷生活してて良かったのはみんなと会えたこととお前の存在だよ、ヒロスケ……おと......お母さんは嬉しいよ」


 「クオ!」


 あそこで助けてくれなかったら…………うぅ、想像するだけでも悪寒がががががが


 「本当に感謝してるよ!」


 「うるせぇ!っていってんだろ!ほら、到着だ、入れ」


 「はーい」


 看守に言われ、金属の重そうな扉を「よいしょ、よいしょ」と開けると____


 「厨房?」


 「クォ?」


 そう、部屋はレストランにあるような大きな厨房だった。


 各調理器具は壁にかけられていてコンロやお鍋。


 そして奥にはダンボールでたくさんの果物やお野菜と調味料が用意されていた。


 「クオオオォ!」


 それを見て興奮したヒロスケが真っ先に果物の入ってるダンボールの場所に行って食い漁り始めた。

  

 …………やばい!


 こんな豪華な野菜や果物が俺達奴隷の為に用意されてるはずが無い!

 

 つまりこれは手をつけちゃ悪い代物……ヒロスケを止めないと!何されるか解らない!


 「ちょっとヒロスケ!」


 「クォ!」


 「え?僕にくれるの?」


 ヒロスケは“ルンゴ”と書いてあったダンボールの中の物を一つ地面に優しく置き、コンッと転がしてきた。



 見た目はリンゴ……ゴクリ......確かに美味しそう……



 「……」


 そんな美味しそうな果物を見て俺の中の理性が一瞬で飛んだ。


 「……いただきます」


 彼女の唇がリンゴに触れ、「シャクッ」と言う音が響いた。


 「っ!?」


 美しい唇が優雅にリンゴを受け入れ、噛むたびに果実の甘酸っぱくも儚い味が口いっぱいに広がり、あまりの美味しさに空腹の麻痺が解けた。


 「美味しい!美味しいよ!」


 ヒロスケと一緒に果物をガツガツ食べていく。


 あぁ......なんて幸せなんだ、こんな美味しいものがこの世にあっていいのか。


 果物なのに!果物なのに!美味しい!


 ここ最近嫌な事が全て吹っ飛ぶくらい魂が回復して行くのが解る。


 {ハッハッハ、そんなに美味しいですか、35番さん}


 「____っふぁ!?!?!?」


 その声に手が止まり俺は青ざめる。


 {美味しいですか?}


 ギギギと壊れた人形の様に恐る恐る後ろを振り向く。


 誰もいない。


 だが現在進行形で話しかけてきていたので確実に見られてる。


 「すいませんでしたぁぁぁぁあ!!!!!!」


 俺は必死にその場で土下座をして謝る。


 {悪いと思ってるのに食べたのですか?}


 「本当に申し訳ありませんんんん!!!!」


 もう謝るしか出来ない。


 {まるで始祖の人間の様ですね}


 「お許しくださいいいい!!」


 何度も何度も地面に頭を擦り付ける土下座をする。


 {まぁ良いでしょう、こうなる事も最初から想定してましたからね}


 「ありがとうございます!ありがたき幸せです!」


 {では、次の訓練です}


 「はい!」


 次の訓練が今から説明される。


 だが俺は何を出されても乗り切れる自信があった。


 なぜなら今の俺は1人じゃないから!


 「クォ!」


 そう!俺にはヒロスケが居る!

 どんな時でも俺を助けてくれる相棒。

 そして俺もヒロスケに対して絶大な信頼関係を置いている。


 言ってみればこの異世界に来ての家族みたいな物だ。


 ヒロスケや奴隷仲間……俺はみんなさえ居ればどんな困難な事でもクリアできる!


 身構え、声に集中する。


 {この訓練では見て解る通り……料理を作ることだ}


 「へ?」


 身構えてた俺は間抜けな声が出た。


 料理?簡単じゃないか?


 こんなに材料あるし野菜炒めでも作ろうかな?

 お酒に合う濃いっ濃いのソースとかも作れるし?


 


 

 


 {君の担当は“肉料理”だ}




 

 ……………………え?


 


 肉……料理? 



 俺は周りを見る。

 

 肉を保管してそうな場所はない……そもそも冷蔵庫も無い。

 ダンボールも全て文字が見えるが野菜や果物の表記しかない。


 「あ、あのお肉はどこに?」

 








 {何を言ってる__}


















 {__そこに立派なベルドリが居るじゃないか}






















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