第43話 寄生植物メルキノコ!


 メルピグの背中に生えている大きなメルキノコの数々が宙を舞い、白雪の積もったクバル草の上にボトッと落ちる。


 「よし!これで!」


 







 ____その瞬間、周りの空気が一変した。










 「プギャァァァァァアガルルルルルル!」







 「!?」





 今まで「攻撃」という行為ではなく……


 人が腕についた蚊を叩く様な

 歩いていたら雑草が靴に絡まったので少し力を入れてぶち抜く様な

 遊んでいたら服に羽虫が付いたので振り払う様な

 


 人間で例えるならその程度だったメルピグが明らかに“攻撃体勢”に入る。



 「ショウ!」


 「……!」


 

 メルピグはクバル草を踏み潰しながら石の上で弓を構えていたショウへ一直線に猪の様に突進していった!


 「!!!!!!、こいつ!」


 ショウは危機一髪、石から飛び降りて避けたが乗っていた岩は音をたてて粉々に砕け散る!


 ショウに向けられた明らかな殺意。


 「プギュルルルルル……」


 ガラガラと砕いた岩が砂埃をあげて落ちていく中、メルピグはゆっくりとショウを向く……てかメルピグ!岩に突進したのに全然平気って!?硬すぎね!?骨どうなってんの!

 

 「……これはヤバい」


 「ですね……でもどうしてだ……さっきまで俺達しか見てなかったのに……」


 考えているリンに遠くからショウが叫ぶ。


 「どうすんだ!リン!」


 「目的は変わらないよ!でも対象がそっちに移った!作戦は変更!俺とショウがメルピグを引き付けてる間にヒロユキさんキノコの回収をお願いします!」


 「……了解」


 今度はショウがターゲットになっている、なので拾う役回りを変えるのは当然だ。


 「ショウ!大丈夫か?」


 リンとは違い、自分の弓を放り投げてまで回避行動に全てを費やしたショウに合流する。


 「俺が大丈夫に見えてるならお前の目は腐ってるな!」


 「それだけ減らず口が言えたら大丈夫!」


 「馬鹿いえ、なんとか、しろ!」


 「こっちも【集点】を使ってるんだけど!効かない!なんでだ!」


 なんとか2人で注目をとっている中、ふとメルピグの後ろに人影が__


 「……」


 ヒロユキだ、うまくメルピグの死角からキノコが落ちた位置まで移動してる。


 そういやアイツ、昔いつの間にか俺の後ろに居たことあったな……あの時はびっくりしすぎて家でちびりそうだったよ兄ちゃん……


 「……採った」 


 ヒロユキは落ちていたメルキノコを手にした瞬間____












 「まずい!ヒロユキさん!」










 「......!?」












 メルピグが後ろにも目がついてるかの様、ノーモーションでヒロユキにターゲットを変えて突進していったのだ!





 「っ!!!!!!!ヒロ!!!!!!」




 思わず俺も声が出る。



 

 ヒロユキはそのまままともに突進を受け吹っ飛んだ。


 高速道路を走る大型トラックにぶつかり弾き飛ばされる様な物だろう、地面にグシャッと受け身も取れずに落ち、動かなくなってしまった……うそだろ……おい!?




 「くそ!そう言うことか!ショウ!今から出来るだけキノコには攻撃するな!触ってもだめだ!」




 「どういうことだよ!」


 「まだ解んないのか!あのメルピグはもう脳がやられてるんだよ!俺たちが今戦ってるのはメルピグじゃない、ウッドリーワンドと同じ植物魔物……メルキノコだ!」


 「んな!?メルキノコが意思を!?そんなの聞いたことねぇぞ!!」


 「それしか考えられないんだよ!」


 「じゃぁどうすんだよ!このまま逃げるしかないのか!」



 


 「…………………いや、一つだけ方法がある」




 「なんだよ!それは!」



 「ショウ!俺は今から一人でアイツを引きつける!ヒロユキさんを回収して35番さんと一緒に逃げろ!」


 

 「は?」



 「アレを使う!」


 

 リンはヒロユキの方に走り出し魔法を唱えた。





 「【限界突破】!」



 先程よりも何倍ものスピードを出し、メルピグを追い抜きヒロユキのすぐそばに落ちているキノコをとった。


 「こっちだクソ野郎!」


 メルピグはリンの思い通り、倒れているヒロユキからリンにターゲットを変え走り出す。


 「くそ!馬鹿が!」



 ショウは気絶してるヒロユキを抱えて俺の方へ走ってきてそして____



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