第42話 VSメルピグ!


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 拝啓 お母さんへ


 昔から彼女が出来なくて心配事かけてごめんなさい。

 将来結婚とか考えてなくて色々あったけど俺は今……“彼氏”が出来そうです(泣)



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 本来ならここが目的地で何事もなく試練が終わるはずでした。


 ですがあろうことか俺は男から告白されてます!……何?この状況?


 「あ、あの、僕は今奴隷だから、その恋愛とかそういうのは」


 奴隷って職業をここで上手く使って逃げよう!


 「「大丈夫!お前は(君は)俺が助けるから!」」


 うおおおおい、なんでそうなるの!何この人たち主人公?


 「とりあえずこれからどうするショウ?」


 話がどんどん俺を置いて進んでいくよぉ……


 「そうだな、俺の35番が困ってるんだからこのまま行くべきだろう……山頂に」


 うん、いつから俺はショウのになったんだ?違うからな?


 「ショウのじゃないけどな?まぁいずれ僕の嫁に……ごほん」


 リンわかってるねー……でも言っとくがお前の嫁になるつもりもない!


 むしろ夫だけどな!いや!そう言う事じゃなくて!


 「……行こう」

 

 ここでようやくヒロユキが口を開いたが、どちらかと言うとどうでもいいから早く行こうと言う感じだ。


 「わかりました、ショウもいいね?」


 「あぁ、行くか」


 そういって俺の問題は解決しないまま、山頂を目指す事に……ま、まぁ、目的の物が取れるならこれ以上話をややこしくしないでおこう……それからでも遅くないよね。


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 「どういう事だ、これは……」


 山頂は山を水平に切り取ったような平坦になっており、大きな岩がゴロゴロ転がってる。


 入り口は俺達が通って来たところしかなく、他に山頂に来るなら崖を登らなければ行けないみたいだ……落ちたらひとたまりもないな。


 ____そして、あたり一面に白い花……《クバル草》の中に異様な怪物が1匹。


 「あ、あれがリンくんの言ってたメルピグ?思ったよりなんというか」


 「……でかい」


 見た目は元の世界の豚だ……そそ、あのピンクの豚。


 だが、高さは15メートルくらいあり足の先には苔がはえてる立派な豚爪。


 そしてメルピグの背中にはびっしりと男性の片腕一本くらいあるキノコが何本も生えている……恐らくあれがメルキノコだろう。


 何だろう……◯ブリにあんなのいなかったっけ?

 あれはイノシシか……


 「いや!あんなデカさのは知らねぇ!普通は俺達より背は低いしキノコだってあんなに生えてない!せいぜい一匹に一個がいいくらいだ!」


 その後ろからリンが冷静に話す。


 「それに異様なのはそこだけじゃないですよ、見てくださいあいつの足元、メルピグの死体が散らばってる」


 そう言われて目を凝らして良く見るとクバル草の上に身体の半分だけ食べられた肉塊や豚の首だけになった魔物の死体が大量にあった。


 待てよ……


 「あの食いちぎられ方、森の中に時々あった魔物の死体と似てる?」


 そう、ここに来るまでに見ていたドロドロの魔物の死体の数々、見慣れたのでスルーしていたが死に方が似ている……つまりあいつも山の麓から登ってきたって事?


 「……メルピグが共食い?」


 ヒロユキがリンに尋ねるとリンは否定する。


 「いや、普通メルピグは群れを作って動く魔物です、共食いは聞いたことないですね……」


 リンは『メルピグ』を良く観察する。


 幸いにもメルピグは下に生えているクバル草を食べていて此方には気づいていない、お腹治しのサラダ食ってるって感じかな?


 「もしかして……1個体にメルキノコを集めてる?」


 「え?」


 「クバル草は栄養が豊富な薬草です、それがこんなに多くある所なんて見たことありません、メルキノコはメルピグに寄生して育つ植物……その宿主がここへ来てクバル草を食い漁り身体に入る栄養が爆発的に増加、メルキノコは吸収できなくなり他のメルキノコで過剰分を摂取してもらってるって事が考えられますね」


 「なるほど」


 解らん。


 「考えても仕方ねぇ!リン!ヒロユキ!やるぞ!」


 ショウが背負っていた弓を展開する。


 「わかった、作戦をたてよう……ショウ!どれくらいの距離ならあの背中にあるメルキノコを撃ち落とせる?」


 「こっから見てもあのデカさだ、体調は15~18メートルってとこか……魔法を使って強化したとしても少し距離をつめないと撃ち落とせる威力はだせない、そうだな……あの岩の上だ」


 ショウはゴロゴロ転がっている中の一際大きな白い岩の一つを指差す。


 「俺とヒロユキさんで囮になる!ショウはその間に移動を!35番さんはここら辺で隠れててください」


 みんなが頷いて、それぞれ走り出す。


 ……あれ?これって俺さらっと戦力外通告された?


 「確かに何もできないけど……」


 ポツーンっと一人……取り残されたので、とりあえず近くの岩影に隠れてみんなを見守る事にした。


 「行くぞ!」


 リンの防具に魔法陣が浮かび上がり光る、話に聞いていた“防具に組み込まれている魔法”だろう。


 確か魔力を流し続けている限り【体力強化】【筋力強化】【自然治癒能力強化】などが発動するらしい。


 「プゴッ!」


 自分に迫ってくる人間に気付いたメルピグだが、その時には足元に入られていた!足早ぇ!?あれが魔法の効果か!


 「はぁぁあああああ!」


 リンは大きな剣……クレイモアを信じられないほど早く振り『メルピグ』のヒヅメを斬りつけた!


 「くそっ!」


 「プギャァァア!」


 だがまったくダメージになっていない。


 メルピグは足元に居る鬱陶しい虫を踏み潰そうとするように足を上げて振り下ろすが、リンは身体を回転させたり、急旋回して足元で踏み潰しを避けていく。


 「一撃でも食らったらペシャンコだ……ヒロユキさんも気を付けて!いざとなったら逃げてください!」


 「……わかった」


 遅れてヒロユキが合流し太刀で援護する。


 メルピグは下に意識が向いてショウの存在に気付いていない!


 ショウの方は目的の岩の上を登っている所だ……確かに、あそこからなら『メルピグ』の死角になっていて不意討ちが出来るな。


 ちなみに、一番安全な立ち位置でヤ○チャみたいな事言ってる俺って……


 「埒があかない!……なら!」


 リンはヒヅメが振り下ろされたのをギリギリで避け、ヒヅメをかけあがって皮膚を斬りつけてみる……が、少し皮を傷付けただけであまり効果は見えない。


 「皮が厚い!これもだめか!」


 「……手強い」


 「ショウ!」


 「任せろ!」


 合図を受けたショウは弓を構え____そして


 「あんだけあれば狙い放題だ!行け【爆矢】!」


 弓から放たれた矢の先は二股になっていて一直線に背中のキノコを刈っていき、クバル草の上にボトボトと落ちていった。


 「やった!」


 依頼達成を確信し俺はガッツポーズ!


 「……よし!」


 「これで!」


 他の人も作戦成功を確信した様だ。



 後はメルキノコを回収するだけ!




 

 この時、ここにいる全員はそう思っていたのだった……






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