第32話 初めてのマルチ!


 ギルドの扉をくぐり、中に入ると、大きな木の丸机が何個も配置されていた。その丸机には料理だけではなく、それぞれの冒険者パーティーが持ち込む依頼品や証拠物が整然と並んでいる。ギルド内は協力と冒険の雰囲気が漂い、多くの冒険者たちが慌ただしく行き来していた。


 「……」

 

 喧騒が続く中、ヒロユはゆったりと歩を進め、ギルドカウンターに向かった。ギルドカウンターでは、受付係りが冒険者の依頼内容を受け付け、新たな冒険者たちが出発する様子が垣間見えた。ヒロユキがカウンターに近づくと黒いギルド専用の服を着た女性が気付き声をかける。


 「こんにちは、今日はどういったご用件ですか?」


 「……これ」


 そういってギルドカードを見せると「少々お待ちください」と言い、ギルドカードを魔法機械にスラッシュさせる。


 すると、ギルドの人の前にモニターが浮かび上がり現在の状況を把握してくれた。


 「……便利だな」


 「では、お連れの方があそこの席でお待ちです」


 カウンターの女性が案内し、案内された席に向かうと、黒髪で高校生くらいの男の子がイスの横に大きな剣を置いて、こちらに気付くと一礼し、気さくに話しかけてた。


 「こんにちは、えと、あなたが一緒に行くことになってるヒロユキさんですか?」


 「……(コクリ)」


 頷いて肯定すると「どうぞ」とイスを進められたので座る。


 「話はあの女の子から聞いてます、なんでも今回が初なんですよね?固定パートナーの人以外と依頼に行くのは」


 固定パートナー?そんなこと言ってたのか、まぁ気にすることでもない。


 「……初めてだから迷惑かけるかも」


 「いやいや、そんな!初めてはみんなそうですよ、こっちは後一人来ますんで少し話ながら待ちましょう、あ!申し遅れてました、僕の名前はリンです」


 「……リン、よろしく」


 「ところで、あの女の子とはどういう関係なんですか?」


 あの女の子?ユキか……本当なら城から来たお手伝いさんだが、こういう小さな事で勇者である事がバレるかもしれない……ここはそれっぽい嘘をついておこう。


 「…………………ストーカー」


 「ストーカー?え?恋人とかでは?」


 「……絶対違う」


 俺はロリコンじゃない。


 「そ、そうなんだ……固定パートナーが異性って言うのは恋人とかしかいないと思ってました」


 「?、どうして?」


 「うーん、確かに男女混合パーティーは禁止されてはいないんですけど……依頼に何日もかかる時とか、色々と気を使いませんか?」


 確かに気を使ってる所はある。

 でも、それが普通かと思っていた。


 「……確かに」


 「ですよね?まぁヒロユキさんが良いなら大丈夫なんですけど、男女でしかも2人だけのパーティーってすごく珍しいなって……あ、気を悪くしないでください?単純に気になってて」


 リンは思い出したかの様に申し訳なさそうに言うが、特に気にすることでもない。


 他が俺たちをカップル見えていても気にすることは一切ない。


 「……気にしないでいい」


 ちなみに、リンが「依頼に何日も」と言っていたが、大抵ユキが依頼内容にある山菜の場所を知っていたり、ユキ自身が強いので襲ってくる魔物を一瞬で倒すので、大体の依頼は2日で終わる。


 「あ!もう1人が来ましたね!おーいショウこっちこっち!」


 そう言ってリンは赤い髪の毛のツンツン頭でリンと同じ歳の背中に弓矢を背負ってる少年に手を振って居場所を伝えた。


 「えと、この人がさっき話した僕のパーティーメンバーのショウです」


 「ちす……」


 「……どうも」


 お互いに軽い挨拶をかわし、ショウはリンの隣に座った。


 「さて、じゃあみんな揃ったので計画を練ろうか!まずはみんなの使ってる武器は何かな?俺はこの剣」


 そういってリンは先程から見えてる大きさ120㎝程の広刃の十字剣。

 柄が両手で持つために長く作られている、クレイモアという系統の大剣を机の上にドン!と置いた。


 ……置かれた時の音からして相当重いのが分かる、これを振り回すくらいだとするとリンはすごい力の持ちなのだろう。


 「俺は見ての通り弓矢だ、遠距離から攻撃する」


 ショウは背負っていた100㎝程の弓を自分の前に置く。

 弓は赤い鱗と甲殻で加工されていて特殊な雰囲気を放っている。


 「……此方はこれ」


 そして俺の持っていた長刀、太刀を見せた。


 これは、ギルドの鍛冶屋で売っている普通の太刀で、初心者にも扱いやすい様に軽く、両手で握って振るときもそんなに力はいらない。


 三人の装備を見せあった後はどう動くかざっくりと話し合う。

 

 「長刀ってことは近接だね、普段からパーティーの俺とショウはともかく、ヒロユキさんと上手く連携とれればいいんですけど……」


 「俺からみて邪魔になりそうならすっこんでてもらう」


 冒険者なりたての俺はショウからそう言われても仕方のない事だと思ったが、リンは冗談でも言うんじゃない!という感じに怒りだした。


 「ショウ!なんて事言うんだ!ヒロユキさんはこの貴重な依頼を受けている人……つまり俺達は招待された側なんだからリーダーはヒロユキさんだ!只でさえ最近は依頼失敗続きで新しい魔皮紙も買えない中、こんな良い依頼に招待してくれたんだぞ?失礼のないようにするんだ!」


 「うぐ……す、すまん……」


 「謝るのは俺にじゃないだろ?」


 ショウは此方を向き頭を下げる。


 どうやらあちらのパーティーはリンの方が主導権を握ってるらしい。


 「……気にしないでいい、此方も邪魔にならない様に頑張る」

 

 リンは俺達を見て、また普段通りに話を進めていく……リンがリーダーでいいんじゃないか?


 「お互いの武器が確認出来て挨拶も終わったので後は目的地に向かいながら話しましょう、今回の依頼を一緒に同行させて貰える条件にキャンプの設置などあったので此方で荷物はまとめておきました」











 俺達は3人でギルドに申請をして《メルキノコの採取》をスタートさせた。












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