第3話 『 影武者 』



残りのトップ側近への計画当日、

冷え込みと当院待合室の窓からの陽射しに気がついて目が覚める。朝になったんだぁと思い、わたしはパソコンデスクの前で寝てしまったようだった、首は起きた拍子に痛くなる、イテテッ

目が覚めて、昨晩の最後の記憶を辿りながら辺りを見回すと、

あれ?と背後奥のオペ台を寝床にしていた野良猫が居ない。また集合場所へ行ったのか?……あ、そうだ!

そう言えば昨日の晩、と言うかもう朝方だが、修正したプログラムが完成して、知人のキースへメールを添付して送ったんだった。その後どうなっているのかな?

点けっぱなしのパソコンをスクリーンセーバーからメールボックスをチェックしてみることにした。


"クリック!……"

……ピンポーン、ピンポーン"


おっ、無事に届いたようだ

キースからの返信も届いている。どれどれ、とその後の状況が気になり早速メールを確認する。


--------------------------------------------------------------------

件名:

例の案件について


内容:

やぁ元気かい?添付メールをありがとう、こちらも順調だったが、また問題が発生した。残りの側近の一人が行方をくらましたままだ、どうやら現場管理担当者から私たちの情報が側近のそいつに漏れ逃走中の様だ。

監視衛星カメラで私たちの行動はバレていた模様だ。ここに添付するがまた後で連絡するので暫し待っていてくれ。それまで、どうか安全に、検討を祈る。


キース より



添付ファイル .jpg3つ l 保存する l 開く l

--------------------------------------------------------------------


これはまいったなぁ……わたしは一言呟いて、添付されたファイルを開いてみると、この病院の建物と野良猫の姿、キースが飼い猫のワクチンと称し仮装してトップの邸宅へ入る時のもの、衛星カメラで撮ったもの全て顔が鮮明に写っている写真だった。

んーどうしたものかぁ……わたしは悩んだ。順調に下準備していた計画が全て水の泡になってしまう、野良猫の姿も無い。するとそこへ、


「ただいまです……

黙って出かけてすいません、先生。」


野良猫が帰って来た。


「おーおはよう!また仕事なのか?」


「いや、それはもう当分無いと思います。集合場所へ行っていたんです。」


「そうか、やっぱり集合していたんだな。それで、仕事がもう当分無いって、どういう意味なんだ、ん?」


「はい。いつもの集合場所へ、ある人が現れたんですよ。それはもう皆んな警戒して一旦は散らばり隠れて、遠目で様子を見ていましたが、仲間の近所の飼い犬がお人好しかお犬好しかはわかりませんが、その人に捕まりまして。」


「人質……あ、いや犬質になったのか?」


「いや、その場所でその人間と話をしたんです。そうしたら、その人は圭吾先生の計画されているトップのもう一人の側近だったんです。ぼくも驚いたんですが、話をしている様子を見て危害は無く安全だと思い、皆んなに声をかけてまた元の場所へ戻ったんです。その犬も声を上げて吠え安心だとわかり近寄って側近の人と話しました。」


「ほぉー……

で、その側近はなんて言ってたんだ、ん?」


「はい。その人は、

"あなたたち動物の事は衛星カメラと調査で知っています、そしてここへ伺いました。私も動物愛護主義者なので、この事を伝えたく跳んできました。

今のトップは影武者です。他にも数名トップの影武者が居ます!どうか気を付けてください、お願いします。"

……との事でした。ぼくもただ事ではないと、何となく体が疼いて先生に黙って集合場所へ向かいました。」


「なんだって?!影武者かぁ……

それは、わたしが知人のキースへ飼い猫のワクチンと装い催眠療法したトップも影武者ってことかッ?!」


「はい。たぶんそうだと思われます。どうなさいますか?影武者の残り数人は世界各国に潜んでいると側近は言っていました。この国にも居るそうです。その側近はこれから、事情がわかっている動物たちの飼い主へしばらく匿ってもらうように頼んでおきました。」


「あぁわかった、報告をありがとう!少し休みなさい大変だっただろう。」


トップのダミー、影武者が居たのは想定外だったし本国にもそいつが居るのは驚きだった。知人のキースへ策を練るように連絡してみようと試みた。


"トゥルルルー……トゥルルルー……"


「あっちの今は夜中だから起きてるかなぁ?」


ほぼ、地球の反対側に居る知人のキースへ不安になりながらも緊急事態と思い直接連絡を取ることにした。


「あー、はい。おーッ圭吾かぁっ!

あ、今なら大丈夫だ、夕飯を済ませたばかりだ。どうしたんだぁ?」


久しぶりにキースの声を聞いた。

わたしは事の現状を事細かに説明していった。キースも内心理解していたようでとても冷静だったが、動物たちの反逆戦争実施時間まで残りわずかと思うと、急を要している。


「そうかぁー、やっぱりなぁ……」


「え?やっぱりって、わかっていたのかキースお前は。」


「いや、明確では無いがすこし疑いながらプロジェクトを進めていたんだ。それに、動物たちの反応も気のせいかもしれないが素直過ぎて事がスムーズに進み過ぎてるから、おかしいな?とは思っていたんだ。

そう!そういえば、側近の残り一人は見つけたよ、でも今の話を聞くとダミーかな、こいつは……」




つづく



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

闘う者たち 音澤 煙管 @vrymtl

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ