第47話 決戦 真のラスボス
江藤は呆然自失として、忘我の境地にあるかのようだった。黒くて見えないが、目が虚ろな雰囲気である。江藤がふわっと手を上げると、禿さんの傍らの黒い塊に向かって勢い良く影が伸びた。
「市川さん、渋谷さんを守って!」
佳弥の声を合図に、幸祐がライトセーバーを片手に飛び出す。間一髪ですべてを薙ぎ払うが、江藤は壊れてしまったかのように執拗に黒い塊―渋谷を狙い続ける。禿さんと美女が何となく気まずそうに食事を続けるすぐそばで、幸祐は次から次へと伸びてくる影を叩き切り続けた。
これじゃキリがないし、お食事の邪魔になる。折角三万も支払ったのだから、禿さんにはちゃんと美味しいご飯を最後まで食べてほしい。何とかならないか、と佳弥は後ろの手をごそごそねじるが、全く甲斐が無い。やむを得ないので、後ろ手のまま上着の裾でスタンガンをこしらえ、佳弥をまるで気にしていない様子の江藤に押し付ける。後ろ向きだからうまくスタンガンが接触しなかったのか、江藤は軽くよろめいただけで踏み留まった。
だが、隙は十分にできた。
「市川さん、今のうちに逃げてください。そこじゃ、禿さんのお食事の邪魔です。」
「佳弥ちゃんは?」
「自分で何とかします。」
幸祐は渋谷を背負うと、脱兎のごとく駆け出した。無理やり負ぶわれた渋谷が幸祐を叱りつけている。
「馬鹿者!私と彼女と、どちらが大事なんだ。優先順位を間違えるんじゃない。年寄りに構うな。」
背中で暴れられて、ふええと情けない声を幸祐が上げる。
「僕には竹本さんの方が大事です。だから、渋谷さんを優先して助けます。」
「正直で良いが、理屈が通っていない。市川君、私を降ろしなさい。」
騒ぐ渋谷の声に反応するかのように、江藤は幸祐と渋谷に向けて攻撃を再開した。渋谷を背負って両手が使えない幸祐は、ひたすら逃げ回る。佳弥は今一度、後ろ向きにスタンガンを構えて江藤に飛び掛かった。とにかくしっかり接触、とばかりに体当たりでぶつかり、スタンガンのスイッチを入れる。バリッと耳になじんだ音がした、と思ったのも束の間、佳弥と江藤は廊下から外へ団子になって転げ落ちた。
「いたた…」
佳弥は身体をねじって、何とかかんとか身を起こす。振り返ると、江藤もまたスタンガンのショックから立ち直るところだった。
「…さん」
江藤は佳弥に向き直り、低い小声で何かを呟く。何て言ったんだ、と佳弥が考えようとしたとき、江藤は同じセリフを繰り返した。
「ゆ・る・さ・ん」
ありきたりなセリフなのに、じっとりと滴るほどに恨みが込められているのが感じられる。こいつはいけ好かない。何を言っても聞いてもらえない状態だ。
視界の隅で庭園の奥を捉えると、渋谷は渋谷で狙われ続けている。影を払いたくても、幸祐が手を使えないので状況が進展しない。庭に、屋根にと逃げまどうが、江藤の遠隔攻撃が的確に追尾していく。そして、佳弥は佳弥で、手を縛られたままだ。完全な劣勢。
だが、禿さんが己を取り戻し、人造スマイルが退場した以上、佳弥の目的は達成された。最早、江藤と交戦する必要は無い。ここは逃げが勝ち、と佳弥は判断した。
「市川さん、撤退!」
屋根の上に向かって声を張り上げてから、佳弥は廊下に上がって建物の中を出口に向かって走り出した。庭伝いでは屋根を越えられない佳弥には出られないからである。
佳弥に気付く気配の無い仲居をそっと避け、佳弥は迷惑を掛けないよう細心の注意を払って廊下を駆け抜ける。その足を何かが掴み、佳弥は思い切りずっこけた。すぐそばを空いた皿を持った仲居が通りかけたので、佳弥はそのままころりと転がって脇に寄ろうとした。その顔のすぐ脇に、鋭利な刃物が振り下ろされる。江藤本体が佳弥を追って迫ってきていた。
「きゃっ!」
佳弥を狙おうとする江藤に引っ掛かって、お皿を持ったまま仲居が転ぶ。何とか焼き、と名のありそうな器が床に散り、一部は割れて砕ける。
「馬鹿もん!一般人に迷惑かけるな!」
佳弥は思わず怒鳴った。その高そうな皿を弁償してやれ、とも思ったがそこまで言っている余裕は無い。江藤が刃物と細長い影を併用して襲い掛かってきている。
散らばった皿の破片をかいくぐって佳弥は更に廊下をひた走る。周りを見る気が無いのか、江藤は一般人が目の前にいようとお構いなしに追ってくるので、皿の割れる音を聞きつけて集まってきた従業員に幾度もぶつかっている。従業員たちには申し訳ないが、おかげで佳弥は時間を稼げる。後ろから影が伸びてくるので、スタンガンを拘束されたままの後ろ手に持って適宜放電しながら佳弥は廊下を進んだ。時折、バリっと手ごたえがあるので、知らない間に当たっているらしい。
下見の成果で、迷うことなく佳弥は玄関口までたどり着いた。肩で息をして、外に出ようとした瞬間、黒い石の敷かれた玄関から一斉に影がそそり立った。
「逃がさん。」
江藤本体は佳弥の背後からひたひたと迫る。
これは本格的にまずい。佳弥はうーむと唸る。と、その時、黒い影の向こうから声が響いた。
「渋谷さん、ご自分で掴まっていてくださいよ。」
と思うと、青白く輝くライトセーバーの刀身が一閃する。玄関を埋め尽くしていた黒い壁は一瞬で消え去り、渋谷を片手で背負った幸祐の姿が見えた。諦めたのか、渋谷は言われるままに幸祐にしがみついている。
「佳弥ちゃん、こっちだ。」
佳弥は建物から飛び出した。だが、飛び出した先も縦横無尽に黒い影が伸び、休むことなく襲い掛かってくる。
「佳弥ちゃん、じっとして。とりあえず、その手を楽にするよ。」
しゅう、と佳弥の背後で音がして、佳弥は手の戒めが解かれたのを感じた。
「あいつ、どうしちゃったんだ。」
粘っこく襲い掛かってくる影を片手で斬り払い、幸祐がぼやいた。渋谷を背負いつつ片手で応戦を続けて、かなり息が上がっている。
「仕事が失敗したショックでやぶれかぶれ、でしょう。」
佳弥も両手に柳葉包丁を持ち、近付いてくる影に片端から切りつけた。だが、際限が無い。
足元が暗く揺らいで、佳弥は数歩跳び退った。木俣も使った、落とし穴だ。だが、穴はどんどん拡大して、逃げ場が無くなる。
「佳弥ちゃんも掴まって。」
幸祐は片腕で渋谷を、もう片腕で佳弥を抱えて、アプローチ脇の小屋の上に跳び上がった。跳躍に余裕が全く無い。平らな場所の無い屋根の上に何とか降り立ったものの、幸祐の息はかなり荒い。
佳弥は屋根のてっぺんにしがみついてアプローチを見下ろした。穴からは細長い影が伸び、佳弥と目の合った江藤が黒いマスクの下でにやあと笑うのが見えた。
「うわ、来ますよ。」
佳弥がそういった直後、屋根の上に黒い染みができ、するりと江藤が立ち上がった。鋭利な刃物を振りまわして佳弥に襲い掛かる。ひょいと頭をすくめて攻撃は躱したものの、傾斜の急な屋根の上で佳弥はバランスを崩す。
「危ない、佳弥ちゃん!」
すんでのところで佳弥は幸祐に手を掴まれ、辛くも屋根にしがみついた。だが、江藤は今度は幸祐に刃物を向けた。のけぞって避けようとするが、刃先が額を掠める。
江藤が幸祐に気を取られている隙をついて、佳弥は江藤の足元にスタンガンをお見舞いした。悲鳴も上げずに、江藤は落下していく。
「市川さん、おでこ大丈夫ですか。」
「うん、ちょっと痛いな。」
顔を伝う血を幸祐は手の甲で拭った。
「でも、平気平気。とりあえず降りるよ。」
幸祐は再び佳弥と渋谷の二人を抱えて、アプローチに飛び降りた。落とし穴は姿を消しているが、小屋の方角からとんでもない勢いで黒い影が伸びてくる。幸祐はライトセーバーで薙ぎ払ったものの、大分動きに切れが無くなっている。
「ちょっとキツイなあ。」
はあ、と息を継いだ幸祐の背中から、うるさいオヤジの声がした。
「だから、私を降ろしなさい、市川君。ここまで来たら一人で走って逃げるよ。」
「しかし、ですねえ…」
「上司命令だ!」
ぽか、と渋谷は幸祐の頭を叩いた。やむなく、幸祐は渋谷を背から下ろした。
「何で前からも後ろからも攻撃されなきゃいけないんだ。」
「日頃の行いの報いじゃありませんか。」
佳弥はハンカチを幸祐に差し出した。幸祐はハンカチを受け取り、不満そうにしながらも顔の血を拭く。
「渋谷さん、気を付けてください。上からも下からも来ますから。」
佳弥が言うそばから上下左右に伸びてきた影を幸祐が断ち切る。渋谷はその隙にたっと門の外へと走っていく。
「本体を何とかしないと。あっちに落ちたはずだから、退治しに行きましょう。」
佳弥は小屋を指さした。幸祐は、分かった、と言って駆け出す。その途中で気になったのか、渋谷の方を振り返った。
「あー言わんこっちゃない。渋谷さん、足元、足元!」
佳弥も振り返る。渋谷の足元にぽっかりと黒い穴が開きかけている。足を取られて、渋谷は穴の真上で立ち往生する。佳弥は慌てて駆け寄ろうとしたが、穴からも黒い影が細長く伸び、佳弥の行く手を阻む。包丁を持った佳弥の手を黒い影が掠め、浅い切り傷から血が滲む。
その時、上空から空を切る音が聞こえて、佳弥は反射的に飛び退いた。その直後に、黒い穴に竿竹のように長い棒が突き刺さる。それと前後して、佳弥の目の前に飛鳥がふわりと着地した。
「お待たせ。」
綺麗なウインクをしながら、飛鳥は左手に持っていた物をごろりと投げ出した。黒くてよく分からないが、ぼこぼこにのされた様子の木俣が呻いている。
飛鳥は半分穴ぼこに埋まったような渋谷を片手で引きずり出した。穴はすぐさま消えてしまう。
「変身もせずに、無茶するわね。」
渋谷を立たせて、飛鳥は苦笑した。
「すまないな、君に借りた黒い布もどこかで落としてしまった。」
「あんなものはどうでもいいわ、いくらでも作れるもの。」
喋りながら、飛鳥は向かってきた黒い影を素手で叩き落とした。そうして、佳弥の手やうなじの傷を見て微かに眉をひそめた。
「佳弥、怪我してるじゃない。」
「ええ、江藤さんが何だかおかしくなっちゃって。」
「随分とまずいことになってるわね。殺傷力を持たせてはいけないはずなのだけど。あなたの教育がなってないんじゃないかしら?」
飛鳥は見もせずに木俣を蹴りつけた。うわあ、容赦ないなあ、と佳弥は感心する。
そこへ、慌ただしく騒ぎながら幸祐が駆けこんで来た。その後ろからは江藤が姿を見せる。
「手が付けられないよ、あいつ。」
幸祐はぜえぜえと息を切らす。見ると、額の他にもそこかしこに切り傷が増えている。
「あら嫌だ。幸祐クンもひどい怪我ね。男前が台無しだわ。」
「飛鳥さんが下手にそれ言うと、嫌味になりますよ。」
幸祐はそう言ってハンカチで血をぬぐった。なかなか額の出血が止まらないらしい。
足元に黒い影が集まってきたのを察知し、飛鳥は渋谷を、幸祐は佳弥を抱えて木の上に跳んだ。明確な殺意、とまではいかないが、未必の故意くらいは感じられる黒い影が一瞬遅れて辺りを切り裂く。
「仕方ないわね、手分けするわよ。」
低い声で飛鳥が言う。
「江藤クンの武器はあたしが全部引き受けるわ。佳弥と幸祐クンはあの子本体を叩きのめして頂戴。」
「渋谷さんはどうするんですか?」
「あたしが連れて歩くわよ、あたしの相棒なんだから。」
いいわね、と飛鳥は傍らの渋谷に確認した。嫌だと言ったら木の上に置き去りにされてしまう。渋谷は黙って肯いた。飛鳥はそれ見ると、ひゅるひゅると黒い紐を出して渋谷を背中に負った。おんぶ紐である。
「あたしの身体は作り物だから、どこを触って頂いても結構よ。落ちないようにしがみついていらしてね。」
「さっきから私は荷物扱いされているのだが…」
「それが嫌ならスマホくらいお持ちなさい。現場で生身はあり得ないわ。」
ぴしゃりと言って、飛鳥は佳弥を振り返った。
「じゃあ、後はお願いね。」
艶然たる笑みを浮かべて見せ、飛鳥は木の下にふわりと飛び降りた。
飛鳥を呆然と見送って、幸祐がぼそりと呟いた。
「そういえば、渋谷さんって古いガラケーだったなあ。アプリ、入らないんだな。」
突っ込みたいところは山ほどあるが、佳弥はぐっと言葉を飲み込んだ。幸祐の手から血まみれのハンカチをもぎ取って、細く折り、おでこの傷に当てて鉢巻状に締める。
「これでとりあえず止血としましょう。パッと見た感じ傷は浅いので、じきに血は止まると思いますよ。他に怪我はありませんか?」
「うん、大丈夫。ありがとう。」
幸祐はにっこり笑って答える。それから真顔になって足元の様子を窺った。
「飛鳥さん、あいつの遠隔攻撃を引き付けてくれてるな。」
飛鳥は神出鬼没な動きで江藤を撹乱し、黒い影をあらゆる方向から誘引している。それを攻撃して消すことはせず、竿竹のような棒に巻き付けて、発生源から更に引きずり出す。飛鳥の周囲は江藤の操る黒い影で満ち溢れ、メデューサの髪の中にいるかのような様相だ。
「行きましょうか。」
「うん。」
幸祐は佳弥を抱えてひょいひょいと木の枝を渡る。よし、と呟いて幸祐は木の下に音も無く飛び降りた。目の前に江藤の背中がある。飛鳥に夢中で、佳弥と幸祐には気付いていない。幸祐は佳弥を降ろし、拳を握って思い切り江藤の頭を殴りつけた。不意打ちを食らって、江藤は前のめりになって地面に吹っ飛んだ。しかし、そのまま地面の影と一体化し、あらぬ方から平然と姿を現す。
「おのれ、ちびババアが…」
地の底から憎しみとともに湧き出たような声を江藤は漏らした。コンチキショウ、またそれを言うか、と佳弥もまた怒りに火が点く。
江藤は鋭い刃物を手にした。遠隔攻撃はできないようだが、近接武器は所持しているらしい。刃物をめったやたらに振り回しながら、江藤は佳弥に突進する。佳弥は冷静に相手の動きを見て、それを避けた。つもりが、いささか歩幅と跳躍力が不足して、刃先が腕を掠る。幸祐の額をあっさり切っただけのことはあり、切れ味は抜群である。黒衣もろとも、佳弥に浅い創傷を負わせる。
たじろいだ佳弥に、江藤は大きく刃物を振りかぶった。こいつ、本気で殺るつもりだ、と佳弥は直感する。殺人はしたくないと言っていた彼はどこへ行ったのか。佳弥とてこんなところで人生を終えるわけにはいかない。まだ十六年しか生きていない。どんなに短命でも、本当の四十五歳の自分の顔を拝むまでは死に切れぬ。佳弥はぎりと奥歯を噛んだ。
江藤が振り下ろそうとした腕に、横から幸祐が飛びついた。腕にしがみつきつつ、何とかして刃物をもぎ取ろうと、硬く握りしめられている江藤の指を開こうとする。腕力同士が拮抗し、僅かに押し合いへし合いしたまま膠着状態が続く。だが、喧嘩慣れしていない幸祐に対して、江藤は今は全く自制が効いていない。幸祐は徐々に力負けし、押し切られて地面に突き飛ばされた。尻餅をついた幸祐に、江藤が容赦なく刃物を振り下ろす。幸祐は横に転がってそれを躱しつつライトセーバーを取り出した。再び激しく降りかかってきた江藤の刃先をライトセーバーの刀身で受け止める。しゅう、と煙のようにして江藤の武器は消えてしまう。
やった、という顔をした幸祐だったが、その直後、江藤が幸祐のみぞおちに強烈な蹴りを入れた。鈍い呻き声を上げて幸祐は倒れ伏す。
「市川さん!」
佳弥が呼びかけても、幸祐は身じろぎすらしない。佳弥は江藤に目を向けた。武器はもう無いが、素手で襲撃する気満々である。これを一人で何とかするのはちと荷が重いな、と佳弥は初めて弱気になった。だが、生きているのか死んでいるのか分からない幸祐を置き去りにして逃げるわけにはいかない。お花くらい上げないと。
江藤はゆらゆらと佳弥に近付くと、正面から佳弥に殴りかかった。佳弥は辛くも横に避けるが、すぐに腕を痛いほどの力で掴まれ、退路を断たれる。
「ババアめ、よくも散々邪魔をしてくれたな。」
江藤は佳弥の襟首をぐっと掴んだ。首が締まって、息が苦しい。だが、言うべきことは言わねば。
「私は十六歳だと言っているでしょう。ババアじゃない。」
「鏡を見て言え。永遠の十六歳だとか言って、若ぶっているババアほど見苦しいものは無いんだよ!」
江藤は両手で佳弥の首を絞めた。
息ができない。頭に血が上って、ずきんずきんと脈打つ。苦しい。佳弥はじたばたともがき、やっとの思いでスタンガンを江藤に突き付けた。バリッと頼もしい音が響き、江藤が佳弥から弾き飛ばされる。
この野郎、本当に殺しにかかってきやがって、と佳弥は首をさすりながら激しく呼吸をした。まだ大丈夫、息もできるし、戦える。
その耳に、幸祐の掠れた声が響いた。
「佳弥ちゃん、そいつは男だ!やっちまえ!」
なるほど、と佳弥は頷いた。キッと顔を上げ、江藤を見据える。江藤はスタンガンのショックからまだ回復しきっておらず、足元がふらついている。やるなら、今しかない。
佳弥は数歩助走をつけ、勢いを乗せて右足を鋭く蹴り上げた。美しい弧を描いた足先は見事に江藤の股間に命中する。
「私は正真正銘十六歳だ!女子高生なめんなよ、おっさん!」
続けてもう一度、左の膝を高く突き出す。半月板が紛うことなき急所に炸裂する。
効いたのか、あるいは効き過ぎたのか、江藤は一言も叫び声を上げず、完全に佳弥に蹴られた体勢のままでどうと後ろに倒れた。ゆっくりと脚を降ろす佳弥の足元で、江藤の変身がするりと解ける。どうやら、意識を失ったようだ。
「ふん、おっさんが無理するからです。」
しゅっ、と佳弥はもう一発空蹴りをする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます