最終章 秦の愁天武 天に在って願わくば②

その後、生前の遺言もあり、天武の死は一年間、伏せられる事態となった。

天武――始皇帝の存在は、いつしか世界の礎になっている。従って、天武の死を敵国に知られれば、咸陽は終わる怖れがある。

つまりは、一年は天武の存在自体を利用し、秦は敵国の襲来を防ぐ手段を講じた。

しかし、嫡子の天亥にだけは天武の死を知らせ、傀儡の王に仕立てた。

陰謀は水面下で行われる。中心人物は殷徳と姫傑。

二名は太子愁天亥に悪を囁き、父、天武以上の恐怖政治を率先させる。

天亥に殺人をさせ、天亥の罪悪感を募らせ、無謀な政策を進んで行わせた。

長城の無駄な拡張、徴税の引き上げ、更に遊牧民族への意味なき圧政に、地方に対しての力業の出兵。

結果、天亥の政策は、綻びだらけになった。

天武のような強い意志も、牽引力もない太子に対し、民衆、とりわけ侵略国は不満と、不信感を募らせ始めた。




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