第13話 静かすぎる日常
「今日から君もマルクス家の一員だ。皆と仲良くやるんだよ」
絢爛な衣装にふくよかな体を包み込んだ、いかにも金持ちそうな男は、両手を広げて少年を迎え入れてくれた。
親戚の家をたらい回しにされ、ようやくたどり着いた平穏の地。これで落ち着いた生活を送ることができる。少年はそんなことを思っていた。
――――だが現実は甘かった。すでに出来上がった家族という集団の中へと入りこんだ異物。あちら側からしてみれば少年の印象なんてそんなものだった。特に男の妻、六人兄弟の長男、次男からの当たりは強く、事あるごとに僻事を並べたて、少年の尊厳をいたく傷つけた。それでも、男だけは違った。寄る辺なき少年に光の手を差し伸べ、温かい食事と濡れない寝床を提供してくれた。しかし、男は仕事で家を空けることが多く、その庇護下に置かれる日は少なかった。
男が出張で数週間家を空けた日の初日の出来事。皆で囲んだ夕食の席。高級な長机に置かれた豪華な食事が人数分並べられていた。そう。人数分だ。妻、長男、次男、三男、長女、次女、三女の七人分。
どうやら少年は家族として数えられていなかったらしい。当然だ。これで正しい。外からやってきた得体のしれない子ども。そんな少年を温かく迎え入れてくれたあの男が異常なのだ。
人間何か食べなければ飢えて死んでしまう。だから少年は夜中にこっそり食糧庫に忍び込み、保存肉や野菜、穀物などをそのまま食らった。尊厳を失った野獣のように。
そんな生活が続き、一週間を迎えたある日の早朝。まだ日も上がらぬうすら寒い空気の中、男が何者かに殺されたとの訃報が入った。それを聞いた妻は泣き叫んだ。少年はこの時初めて、大人の女性が恥も外聞も捨てひたすらに喚く姿を見た。子どもたちもまた同じように泣いた。肩を抱き合い、互いに傷をなめ合うようにして。
そんな凄惨な光景の中、伝令役の男から、妻宛てに書かれた手紙が手渡された。差出人は夫だ。その内容はこうだった。
『あの子を頼む』
たった一文。それも、家族でもない少年に向けられた言葉だった。もっと書くべきことがあっただろう。妻に、子どもに、書きたかった言葉があっただろう。なぜ自分なんだ。なぜよそ者の自分に。やっぱりあの男は異常だ。
「ああ・・・・・・ああぁぁぁぁぁあああああ!」
妻は叫んだ。手紙をバラバラに引きちぎって、踏みにじって、叫び続けた。
「ふぅ――――ふぅ――――」
落ち着きを取り戻した妻だったが、同時に何かを失ったようだ。その目には怨恨の炎が垣間見えた。殺してやる。そう言っているようにも聞こえた。
「お前が来たから・・・・・・お前のせいで・・・・・・お前が・・・・・・お前が――――」
美しかったはずの顔が醜く歪み、憎しみに溢れた双眸で少年をただただ睨み続けていた。ああ。もうここにいてはだめだ。いずれ殺される。そんな第六感が働いた。いや。これはそんなものではない。ただの確信だ。あの表情から読み取れるのは明確な殺意。本当にそれだけのことだ。・・・・・・今夜にでもこっそり逃げ出そう。
少年は決意した。大人たちに振り回されていた今までの自分を変えるため、そして何より、自由を手に入れるため。
家族の目を盗みながら、夜までの間に必要な準備を済ませる。食糧庫から数日分の食料を調達し、必要な衣類も子どもたちの部屋から盗み出し、自衛のための武器も、地下にある武器庫からいただいた。
――――夜も深まり、子どもたちは寝付いた。あの女も就寝前の紅茶を飲んでいるころだ。さあ準備は整った。行こう。少年の寝室である、二階の隅にある狭い狭い物置小屋から抜け出そうとしたその時だった。
「きゃぁぁぁぁああああ―――――!」
屋敷下から、あの女の金切り音が爆音と振動と共に響いてきた。
なだれ込んでくる大勢の足音。その内いくらかが二階へと続く階段を駆け上がってくる。
――――とにかく逃げなければ。このままではまずい。でもどこへ逃げる。二階建ての屋敷にこれ以上逃げる場所なんてない。
近づく足音。何者かが迫る。どうする――――暗い物置部屋の端、ちょうど子ども一人分身を隠せるスペースがあった。少年は飛び込んだ。身体を丸め、闇に潜んだ。息を殺し、耳を澄ませる。
「こ、こいつらに近づくな!触れるな!殺してやる!殺してやらぁぁぁあああ!」
長男の声だ。戦っているのか。・・・・・・馬鹿だな。
「・・・・・・」
それからすぐに彼の勇ましい声はかき消えた。
「やめて!お願い!妹だけは!―――――いやぁぁぁぁぁああああ!」
懇願しているのは長女だろうか。この状況でも妹を守るその覚悟と勇気は見上げたものだ。・・・・・・それも聞こえなくなった。
――――やがて誰の声もしなくなった。全員殺されたのか。
「や、やめろ!やめてくれぇぇぇえええ――――!」
それからすぐにまた悲鳴が聞こえてきた。野太い男の声だ。背筋が凍るような感覚。辺りの空気が一瞬にしてその気温を下げた。寒い。さっきまでもっと温かかったのに。どうして。
悲鳴はやむことが無かった。下の階では阿鼻叫喚の数々。しかし、それもすぐに静寂と化した。足音は二階へと向かってくる。
「誰だ!おいお前ら!やれ!」
誰かが指示を出している。男だ。またしても悲鳴が上がる。下品なコンサートみたいな不協和音が、凍った空気の中を振動していく。
――――そして、最後に一つ残った足音。
奴は二階にあるすべての部屋の扉を一つずつ開けている。一つ。一つ。また一つ。ついに少年が潜む物置部屋の隣までやってきた。扉が開く。中に入る。扉を閉める。――――来る。物置部屋の扉がギギギと嫌な音を立てながらゆっくりと開く。
「あなた、そこで何をしているの?」
「え・・・・・・?」
かけられた声の方を向こうと、少年は恐る恐る身を起こす。窓から差し込む月明かりに照らされたその顔は――――女だった。
暗闇に光る猫の瞳のように、こちらを見つめる大きな瞳は輝きを放っていた。
「どうして戦わないの」
彼女は冷徹に尋ねた。周りの空気もそれに比例するように、さらに冷たくなっていく。
「そこに倒れていた少年は剣を握ったまま死んでいた。必死に兄妹を守ろうとしていた。おかげで二人は助かった。あなたはどう?戦うための武器を持ちながら、そこで隠れて、ただ震えていただけ」
「だって・・・・・・僕は弱いし――――」
「それは戦わない理由にはならない。逆も同じ。でもあなたには守るべきものがあった。そのための武器もあった。なのに戦わない。それはただ逃げているだけ。そんな人間に価値なんかない」
「・・・・・・」
「私は別にあなたを助けたわけじゃない。偶然、あなたがここにいただけ。だから私に恩義を感じる必要なんてない。あなたみたいな人間にそんなもの感じられても困る。ここで起きたことはすべて忘れて。じゃあね。卑怯者の坊や」
「あ・・・・・・」
卑怯者。彼女はそう言い捨てた後、颯爽と去っていった。その手に持った薄い刃の刀は怖いくらいに美しく、それでいて冷たい雰囲気を纏っていた。
――――そうだ。
僕は――――いや、俺は――――
「ん・・・・・・」
目が覚めた時、眼前に広がっていたのは、見慣れた天井だった。
夢・・・・・・だったのか。
「お、やっとお目覚めか」
ベッドの横に置かれた丸椅子にはノームが本を片手に座っていた。
・・・・・・記憶が混濁している。奴隷館に行った辺りからの自分の行動をよく思い出せない。
「ノームさん・・・・・・僕は・・・・・・」
「心配したぞ。帰ってきた途端に気を失っちまうんだから」
「気を失ったって・・・・・・そうだ!サドデスたちは、彼女たちはどうなったんですか!?」
「ん?ああ、あいつらなら無事に保護した。今は下で朝食を取ってるところだ。ほんと、お前のおかげだな。あの麻袋いくら入ってたと思う?聞いて驚け!5ゴールド78シルバ―45カパーだ!・・・・・・まあ三人分の市民権を買えばほとんどなくなっちまうんだけどな」
「そんな大金どうやって・・・・・・まあでも、よかっ――――」
ユリオの身体がぐらついた。酒を飲みすぎた時みたいに、視界がぐらぐらと揺れる。脳みそがかき混ぜられるような気持ち悪さだ。
「おい!大丈夫か!」
「え、ええ。ずっと横になっていたからですかね。少し眩暈がしただけです。気にしないでください。・・・・・・それよりもどうやって彼女たちを救出したのか教えてくれませんか?その・・・・・・記憶が曖昧で、よく覚えていないんです」
「え、だってあの時お前――――どこまで覚えてるんだ?」
「奴隷館に到着して、ノームさん、ルチアさんと一緒に小窓から侵入しようとしていたあたりです」
「そうか・・・・・・」
ノームは顔を伏せ、黙り込んでしまった。言葉を選んでいるのか。何か言い出しにくいことを隠そうとしているのかもしれない。
「覚悟はできています。包み隠さず、正直に話してください。お願いします」
ユリオはノームの目をじっと見つめてそう言ってやった。
「いや、でも・・・・・・あれはちょっとなあ・・・・・・」
「ノームさん!」
「・・・・・・いいか?落ち着いて聞けよ?」
ノームはそう言って、事の経緯をすべて話してくれた。
「嘘だ・・・・・・そんな馬鹿なこと・・・・・・」
でもノームの様子から嘘を言っているような感じはしない。もとより、例え嘘をついていたとしても、彼になんのメリットもない。じゃあ本当なのか?あれだけ望んでいた強さが、そんな簡単なことで手に入るのか。そんなの馬鹿げている。
ユリオがまだ冴えていない頭で必死に考えていた時、突然、ノックの音が響いた。
「教官殿。ユリオの様子は――――おお!起きたか!全く、心配をかけてくれる。ともあれ無事で何よりだ!さあ、朝食にしよう!はっはっは!」
ドアを開け、そこに立っていたのはナルシスだった。豪快な笑い声は眠気なんか軽く吹き飛ばしてくれた。
「ユリオ、その前に一度身体を洗ってこい。服も何も昨日のままだからな。その・・・・・・色々と汚れているだろうし、一度熱い湯でも浴びたら頭もすっきりするだろ」
「・・・・・・はい」
ベッドから這い出たユリオは、ふと下半身に違和感を覚えた。そこには、何かで濡らされたような跡がついており、それもカピカピに乾いていた。・・・・・・あの教官が言っていたことは真実だったのだろうか。にわかには信じられないが・・・・・・今はとにかく風呂に入ろう。混沌とした頭の中を整理するために。
「おいナルシス。これは一体どういうことか説明してもらおうか。ことと次第によってはお前を粛正しなければならないのでな」
「い、いや、これはその・・・・・・」
昨日は色々あって、育成所に帰った後しばらく部屋にこもっていたノーム。なんとか落ち着きと自信を取り戻した彼は、気を失ったままのユリオを心配してずっと付き添っていたのだ。
救出したサドデスたちはナルシス、シーラに任せていたので、あれからどうなったのか気になっていたのだが――――
「こんな・・・・・・こんな美女たちを手籠めにしやがって・・・・・・」
「僕は別に手籠めになど・・・・・・」
「そうよ。ナルシス様は何も悪くないわ。ただ私がお慕いしているだけのこと」
「ちょっと!私が先に目を付けたんだから!あなたは黙ってて!」
「・・・・・・二人とも離れてください。彼は私のものですよ」
「あなたたち。好き勝手言ってるようだけど、ダーリンは私のダーリンなんだからね。愛人は認めるけど、正妻はこの私。そこのところよろしくね」
こうしてナルシスハーレムが形成されていたのだ。シーラを含めた四人のサドデスが、それぞれ思い思いにナルシスの身体を引っ張り合っている。・・・・・・なんだよナルシスハーレムって。ノームは自分で思いついた言葉に反感を覚えた。イケメンだからか?イケメンだからなのか?今回の作戦に関してノームはほとんど何もしていないので、文句らしい文句は言えないのだが、それでも言いたい。言わせてほしい。イケメンってそんなにいいものなんですかと。
「・・・・・・まあいい。そういやクレス達の姿が見えないな。あいつらはどうした?今日は休みにしておいたはずだが、どこか出かけたのか?」
「ああ、彼女たちなら市街で副業中ですよ。いや、つい最近まではあっちが本業みたいなものでしたが」
「副業?」
「ええ。クレスはパン屋、ネリネは武器屋でそれぞれ働いています。僕たちも冒険者の仕事が無いときは街の店で働いていますよ。なにせ、生活費は自分たちで賄わないといけませんからね。死活問題なんですよ」
「パン屋に武器屋・・・・・・」
ネリネはなんとなく想像ができる。鎧に身を包んだままで冒険者の客とおどおどしながら会話をしている様子が。武器屋ならばそんな店員も違和感がない。彼女にぴったりな仕事だろう。だが問題はクレスだ。パン屋だと?あの高飛車で高慢で、傲岸不遜な脳筋女が?・・・・・・想像ができない。
「せっかくのお休みですし、ゆっくりしていたらどうかとは言ったのですが、二人ともなかなか聞いてくれなくて・・・・・・それはそうと、ルチアさんはどうされたのですか?昨日の一件から姿が見えないのですが・・・・・・」
「ああ、それなんだが――――」
遡ること昨日の晩。というか今日といってもいい。明け方よりも少し前の薄暗い頃。奴隷館から帰ってきたノームはナルシス達にサドデスたちの今後について軽く話をした後、一人先に自室へと向かった。ユリオに言われた一言が相当心にきたらしく――――まあそれだけではないのだが――――部屋に着くなり、倒れこむようにして硬いベッドに吸い込まれた。
「もう嫌だ・・・・・・」
横向きになりそんなことを呟いていると、コンコン、とノックの音が鳴った。だがノームに応じる気力はなく、聞こえないふりをしてやり過ごそうとしていたのだが――――
「返事くらいしてよ!」
と言いながら勝手に扉を開けて入ってきたルチア。
「どうしたのさ!なにがあったの?・・・・・・ねえってば!」
ノームが沈み込んでいるベッドに何のためらいもなく寝転がり、抱き枕のようにして落ち込む白髪少年に絡みつく。一人にしてほしい。ノームはそんな気分だったのだが、背中に感じる彼女の体温のせいでそんなことも忘れてしまった。
何かあったの?・・・・・・あったよ。心が抉られるようなことあったよ。でもこんな話お前にできないだろ。聞いてほしいけれど聞いてほしくない。そんな複雑な心中を察するでもなく、ルチアは愚痴をこぼし始めた。
「せっかくあれだけ準備したのにさあ。ものの数分で終わっちゃうんだもん。あんな隠し玉用意してたんなら私いらなかったよね?消化不良起こしちゃうよ。不完全燃焼だよ。ねえノーム。どう責任取ってくれるの?もうデートだけなんて許さないからね」
「お前心配してくれてるんじゃなかったの?何があったのって聞いてくれたよな?ていうかあんなもん俺にも何が何だかわかんねえよ・・・・・・」
「心配なんか――――してるに決まってるじゃん。・・・・・・何があったか話してよ。力にはなれないかもだけど、それでも楽にはしてあげられるでしょ?」
「ルチア・・・・・・」
ノームはルチアに背中を向けたまま、話そうか話すまいか悩んだが、結局話すことに決めた。楽になりたかったのかもしれない。だから話した。
「ユリオにさ・・・・・・粗チンって言われたんだ・・・・・・それでさ、それだけのことで落ち込んで・・・・・・手助けするなんてかっこいいこと言ってたくせに何もできなくて・・・・・・俺、こんなんで教官やれてんのかなって・・・・・・」
途端に訪れる沈黙。背中越しの彼女は今どんな顔をしているのだろうか。ちょっとのことで落ち込んで、見るべきものを見失って、進むべき道を進まず、ただ立ち尽くす。そんな弱い自分をどう思うだろうか。
ノームが不安に飲み込まれそうになったその時――――
「・・・・・・っ・・・・・・ぷふっ!あはははははは!そんなことで落ち込んでたの?気にしすぎだよ!ほんっとメンタル弱いんだから・・・・・・まあそこが可愛いんだけどね」
「笑うなよ・・・・・・これでも真剣に悩んでんだからさ・・・・・・」
ノームが弱弱しくそう言った直後、身体に巻き付いているルチアの腕に力がこもった。
「大丈夫。大丈夫だよ。別に粗末でもいいじゃん。そんなのノームの魅力の何百万分の一にも劣る些細なことだよ。それに、私はあなたのすべてを愛してる。だからそんなこと気にしないでよ。そんなに落ち込まないでよ。心配で心配で心が張り裂けそうなんだ。だから、お願い。あなたはきっと大丈夫だから」
「・・・・・・」
『あなたはきっと大丈夫』
妹と離れて暮らすことになり、その精神的支柱を失ったノームにとってそれは、これ以上ないくらいに嬉しい言葉だった。
「・・・・・・ぐっ・・・・・・ぅぐ・・・・・・」
涙が止まらない。こんなに気にしていた自分が馬鹿みたいだ。コンプレックスを、くだらないことで思い悩む自分を肯定してくれる。それだけでこんなにも安らかな気持ちになるのだろうか。ああ、ほんとこいつはいつもそうだ。側にいてほしい時には必ずいてくれて、慰めてほしい時には必ず慰めてくれて、いつも、いつもバラバラになった心をつなぎ合わせてくれる。
「よしよし。辛かったんだね。泣き終わったらもう悩むのは終わり。ね?」
ルチアはすべてを包み込むように、優しく、優しく、頭を撫でてくれた。
やがて涙が止まったノームは、寝返りを打つように身体の向きを変え、ルチアと向き合う形になった。鼻に息がかかる。そんな距離だ。
「ありがとうルチア。ほんと、惚れちまいそうだよ」
セリアさんがいなけりゃ、すぐにでも求婚したいくらいだよちくしょう。
「ふふふ!惚れてもいいんだよ?」
「・・・・・・うるせえ。でも、ほんとありがとな」
ノームはルチアの小さな頭に手をまわし、毛の流れに従って優しく撫でた。さらさらとした感触が心地いい。心が洗われる。そんな気がする。
「・・・・・・」
ルチアは無言のまま、にんまりとした笑顔のまま、ノームにきつく抱き着いていた。
「今日は色々疲れたろ。もう寝な。約束は守るからさ。デート、しような」
「・・・・・・うん」
ルチアは天使みたいな顔のまま、気づけば、すぅ――――すぅ――――と可愛らしい寝息を立てていた。
――――という事実は伏せたまま、
「とりあえず俺の部屋で眠ってる」
だいぶ省略して、一文で済ませた。
そして、ナルシスからの追及を避けるように、
「ラムズとパルムさんは?」
バルディア以来見かけていない二人の所在を尋ねた。
「ラムズはおそらく地下かと。パルムさんは・・・・・・彼と一緒か、もしくはご自宅へとお帰りにでもなったのでしょう」
「そうか・・・・・・まあそれはとりあえず置いとくか。今はこいつらの市民権を買いに行くのが先だ。早い方がいいからな。ユリオの準備ができ次第、街に行くぞ」
「そうですね」
「・・・・・・それまでにそのハーレム解散しておけよ。いいな」
「それは承服しかねます」
ノームがイケメン騎士にイラついたところで、ユリオがようやく風呂から上がってきた。それから半時ほど待ち、もろもろの準備を終えた一行は、ギルドへと向かった。
しかし、ノームは今の状況に疑問を抱いていた。順調にいきすぎている。そんな気がしてならない。
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