第2話 ろうひ
訳あって高校生の雨は一人暮らしをしている。木造の二階建てアパートに月3万円の家賃を払って高校に通っている。田舎の月3万はインターネットが繋がっており、お風呂にトイレが完備。どこぞの共同トイレだの不自由な生活になっていない。見た目はちょっと古い建物に20歳の雨を招いた。
未来の彼、言いづらいので、二十歳と呼ぶ。
彼とお金をの話をしよう。
「二十歳は何で1000万の借金を作ったんだ」
どうせ自分なのだ。ため口でいく。
二十歳は借金の原因を話し始める。
最初は10万円だったという。
大学に入り、新しいことに挑戦したいと思った二十歳はパチンコに通った。最初はビギナーズラックで大当たりし、8万円儲けた。調子に乗った彼は、週一で通うようになり、次第にのめり込み、大学の単位を落とすようになる。週一が三日に一回、三日に一回が二日に一回、最終的には月の20日をパチンコに行くようになり、初めての借金をした。カードローンで10万円借りた。
「大学は?」
「中退した」
「マジで屑人間じゃん」
「ああ、何せ過去の自分に借金の取り立てをするくらいだからな」
大学を辞めた二十歳は、人生を再起動させようと競馬を始めた。将来は、スロプーと競馬の二足のわらじで食っていこうと100万円を借金し、毎日ギャンブルで金稼ぎした。しかし、ああいったものは本当に頭の良い1%の人間が勝てるものであって、大学中退の二十歳はカモになった。3か月を過ぎるころには手元の100万がなくなり、無一文になった。
「次に株とFXを始めた」
億り人という言葉が流行った。トレードで1億円以上の稼ぎがある人のこと。二十歳は億トレーダーになる夢を追って500万円の借金をした。無職のプータローが500万円もの大金を得るために、カードローンを何社もまわり、あの手この手で数十万円ずつ引き出した。人間夢を見ると周りが見えなくなり、まさか全額失うとは思いもしなかった。口座を開き、短期トレードを繰り返した。結局二十歳は1か月で金を飛ばし、不幸にもレバレッジをきかせていたので2倍近い金額が消し飛んだ。500万失ってさらに500万近い借金ができた。
「と、まあ、こんな感じで1000万近く借金をしました」
「え~と、あ~と、あなたは本当に未来の僕ですか?」
雨は不思議に思う。この方、家賃の3万円を超える金額を使った試しのない小心者が3年後に、100倍以上の金を湯水のごとく使う姿に驚きを隠せない。しかも彼はキャバクラや風俗にハマった訳でも連帯保証人になって騙された訳でもない。100%自分の自業自得で1000万の借金をつくったのだ。
「雨、ちょっと悲しい出来事が起きて自暴自棄になっちまったんだ。人間、タガが外れるといくらでも豪遊できちまう。だから高校生のうちから金融リテラシーを身に着けて俺のようになってほしくねえ」
ワイルドになった未来の二十歳は言う。
とにもかくにも、なぜ、ギャンブルや株、FXが18歳未満に禁止されているのか理解した。簡単に破産し、地獄に落ちてしまうからだ。
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