第3話 ふくぎょう

 さて、本格的な副業を始めよう。雨は片っ端からネットで検索する。「副業 おすすめ」、「副業 高校生」。クズの彼も手伝ってくれればいいのだけれども二十歳が行動を起こすと裏目に出る。返そう、返そう、と躍起になった結果が借金地獄なので目も当てられない。本業を高校生と決めて、まじめに副業探しする。


「1、プログラミング?」


 6年前に親に買ってもらった旧式のパソコンの上部にでかでかと出てきたのはプログラミングの文字。ちょっと調べてみると、ウェブサイトを作ったり、デザインを整えたり、ちょっと特殊な副業だった。


「それはあかんで、雨くん」


「なんで関西弁?」


「おっちゃんパソコン知識ゼロやねん。それにプログラミングは作業量多いし、バカには無理や」


「ま、あんたがそういうならやめとく」


 将来の自分に拒否され、プログラミングを諦める。雨のPCスキルは低い。もともと向いていないのは分かっている。近年、簡単なプログラミングを小学校の必修化にする動きが目立っているけれど、算数の応用力を鍛えるためであり、プログラミング一本で稼ぐまでのレベルは求められていないはず。


 今後、プログラマーの需要が増えるのは確実だし、SEの数は足りていないと聞く。けれど、雨の目指しているのは将来プログラマーになることではなく2000万を3年で返す方法。手に職をつけるというのはちょっとばかし心もとない。


2、ライティング。国語の作文は苦手なので却下。


3、インフルエンサー。有名人になれるものならなってみたい。


4、せどり転売。元手がないので回れ右。


5、アンケートモニター、ポイントサイト。稼ぐ額が小さいためNG。


「アフィリエイト?」


 記事にはこう書かれていた。


高校生が普通のサラリーマンより稼げる可能性を秘めているのが、アフィリエイトです。

高校生だと親の許可が必要なためややハードルが上がりますが、大学生の中にはアフィリエイトで稼ぎすぎたために、就職しないで遊んで暮らしている人もいるほどです。

アフィリエイトは、副業で月収100万円を稼ぐ人もいるほど稼げる仕事で、高校生であっても例外ではありません。

ただしアフィリエイトで報酬をもらうためには、ASPと呼ばれる広告提供サイトに登録しなくてはいけません。


「月収100万!?」


 普通の副業と明らかに違う額。パソコンの画面から放たれた強烈な電流にバチバチと痺れた。これだと思った。


「二十歳はどう思う? アフィリエイトはやったことあるか?」


「やったことあらへん」


「だからなぜ関西弁。まあ、別にいいけど。これやってみないか?」


「アフィリ? 要はブログを書くお仕事やろ?」


「ああ、ブログのセンスがあれば文章力はいらない。誰でもチャンスがある」


 ブログを書いてアフィリエイトで稼ぐ。資本主義というマネーゲームの現代で高校に通いながら在宅できて、かつ高収入が見込める。これはこれはなんて素敵なんだろうと感じた。


「おいおい、このサイトの最後にこう書かれてるで『ただしアフィリエイトは楽して稼げる副業ではありません。それなりの根気がある人だけが月収10万円以上を稼ぐことができるだけですので、確実な収入が欲しいのであればアルバイトの方が向いているでしょう』それでもやるんか?」


「ああ、ブログはインプットが重要になる。お金の知識を集めるだけで2000万円必要問題の糸口が掴める気がする。やってみて損はないと思う」


 パチンコ、スロット、競馬、株、FXに失敗した未来の自分が、大逆転するためのブログ生活が始まった。

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