■記録■■050505

✕月 日・雪

 目を開けた私の前に、顔が一つありました。

 それは、見覚えのある顔でした。魚魚さんです。

 ベッドの中で目覚めたばかりの無防備な私に、魚魚さんは触れそうなくらいの距離にまで顔を近付けてきたのです。

「きゃあっ!」

 私は驚きのあまり、大声で悲鳴を上げてしまいました。それに魚魚さんも驚いたようで、跳び上がって床に尻餅をつきました。

「何をしてるんですか!」

 私は当然の如く、抗議の声を上げました。

 ところが、魚魚さんは「グェッギョギョ……」と意味不明な言葉を発するばかりでしたので、彼の意図することが私には分かりませんでした。

 魚魚さんは尚も立ち上がると、ゆっくりと私に近付いてきました。そして、前屈みになって魚魚さんは再び私にぐっと顔を近付けて来たのです。

 魚魚さんの目的は分かりません。ただ、それから何をしてくる訳でもなく、ただじぃっと私のことを見詰めてきたのです。

「やめて!」

 そんな気持ちの悪い視線に耐え兼ねて、私は魚魚さんを突き飛ばしてしまいました。

 魚魚さんは後ろに吹っ飛んで、壁に背中を打ち付けて倒れました。


 私は今のうちにと、魚魚さんが怯んでいるその隙に病室を飛び出して行ったのです。

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