21

そんな日々を繰り返していたある日のこと。

今日もパンを3つ紙袋に詰めながら、琴葉が訊ねた。


「パン屋の私が言うのもなんですが、毎日パンで大丈夫ですか?」


「え?」


「いや、あの、毎日来てもらって何だか申し訳ないです。」


紙袋を手渡しながら、琴葉は首をすくめた。


「迷惑?」


「いえ、全然!むしろ大歓迎なんですが、ちょっと心配になっちゃって。」


雄大の言葉に、琴葉は全力で否定の意味の手を振る。

何だか気まずくなってしまって、琴葉は目を伏せた。


「そういう南部さんはどうなの?売れ残ったパンを食べてるんじゃないの?」


「…食べてますよ?だからたまにはお米も食べたくなります。」


毎日の傾向から調整しながらパンを焼いているが、毎日完売とはいかずどうしても少し売れ残ってしまう。

廃棄なんてもったいなくてできないし、かといってお裾分けするような人もおらず、結局は琴葉自身が食べることになる。

雄大を心配しておきながら、自分もパンばかりたべているのだ。


「そっか、じゃあ今度寿司でも食べに行こうよ。」


雄大の提案に、琴葉はしばし固まった。

一瞬言われた意味がわからなかったのだ。


「えっ!?早瀬さんとですか?」


「俺とじゃ嫌?」


「いえ、そういう意味ではなくて。えっと、何ていうか、男の人と二人でご飯を食べに行く経験がなくてですね、ど、どうしたものかと思いまして。」


語尾がフェイドアウトしそうなくらいゴニョゴニョとなりながら、琴葉は顔を赤らめた。

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