第百四十一回 でも、冗談はさておき。


 ――しかと見る、冬の星座。


 前回に引き続き、プラネタリウム……僕は椅子に座っていた。両サイドの席には可奈かな千佳ちか。……そうねえ、三人とも溢れんばかりの乙女心で、星座の浪漫に浸っていた。



 さっきまでは退屈とばかりに居眠りした身だけど、プラネタリウムというこの空間だけど、遥かなる宇宙空間へと吸い込まれそうな感じも。……もう七夕は過ぎたけど、疑似的にはなるのだけれど、彦星ひこぼし織姫おりひめの再会を、可奈は見せたかったのかもしれない。


(……ごめんね、

 あの日、喧嘩しちゃって)


 察しの通り、その日は七夕。……もう二度とない令和元年の七月七日。


 あの、何て言うか、


「……可奈、あのね」


「わかってるよ、梨花りか」――間髪入れずに可奈は返事をする。今は暗い場所でも、その顔は温かいものだと悟れる。瞬く星のように、パッと、僕のハートを照らしてくる。


「来年の七夕、またこの場所に来ようね。

 再来年も、また次の年も、ずっとずっと……この三人で、また来ようね」


 と、可奈は言った。


 何だか涙まじりの声にも聞こえて……うまく言えないけど、重い言葉とも感じられた。



 ――僕らは出る。暗い場所から明るい場所へと身を移した。……まあ、それ以前に、プラネタリウムという空間には、終了告げる明かりがともされるのだけど、


「梨花どうしたの? 顔が赤いよ」と千佳が、僕の顔をじっと見ている。


 そして、可奈も僕の顔を覗き込んで「ほんとねえ……大丈夫? まだ風邪が治ってないんじゃないの? お医者さん行ってみる?」と心配そうに、そんな顔をして。


 ――見つめられれば見つめられるほど、胸のキュンキュンも止まらないの。



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