第百三十八回 感性を求めて、今再びのプラネタリウムへ。


 ――病み上がり第一弾! ……とはいっても、もう銀杏並木が似合う季節。


 ふむふむ、まだ早いかな?



 本当はね、体育祭が終わって二学期の中間試験も終わって……そうなの。その反省もあるの。……可奈かながね、少々機嫌悪いの。原因は僕。もう二度としないと反省したのに、お勉強から逃げちゃったの。それはね、……察しの通り理科のお勉強だったの。


梨花りか、わかってる? もう逃がさないんだから」


「可奈、逃げないから、もう手を離して」


 という具合に、手を繋いだまま離してくれないの。これで三回をカウント。


「駄目よ駄目、プラネタリウムに付き合ってもらうからね。千佳ちか、ちゃんと梨花を見張っててね、『ラパン』のように隙あらばすぐ逃げちゃうんだから」


 そう、千佳も一緒。時折ギラリとする目で、


「ラパン三世ね、なるほど『あなたの心を盗みました』……ほんとにね」


 ラパン三世は、天下の大泥棒。――エブリではないのだけど、エブリ系に含まれているのだ。エブリ大好きな千佳の守備範囲で、劇場版も含め、全シリーズを見たという。


 それに見立てた台詞を流用し、何かと僕に当てはめる。……思い当たる節、思い当たるといえば、可奈が僕の唇を奪った現場を、千佳が目撃した。よりによって濃厚なキス&体温感じるほどの抱擁。過激な場面を見せてしまった、丁度その日からだ。


 もしかして、

 僕にジェラシー? へえ、可愛いね。


「エッヘン! 星野ほしの梨花は、逃げも隠れも致しません!」


 と、ここは舗道で歩道。三人ともリュックに制服という恰好。どこの学園なのか一目瞭然で、……にも拘わらず大きな声で。道行く人、通りすがりの人も皆が皆、こちらを振り向き振り返って、ホットなシャワーのように注目を浴びる。――それはそれは、


 赤面×三で、可奈も千佳も僕でさえ三人とも赤面となり、その場から猛ダッシュだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る