第百三十五回 涙は心の汗! ……の後には。


 ――誰ももう、あなたを一人ぼっちにしないからね。



 と、今日の締め括りで、ママが僕に言った言葉。……実はママ、千佳ちかと少し……そうだねえ、二十分くらいお話していた。その模様を、コソッと語ってくれたのだ。


 千佳にしては珍しいことで、


 いつもは一言二言、相槌……自ら話しかけることはなかったのだけど、学校生活に於いての出来事や、僕のことから入り可奈かなのことまで、大河のように語っていた。


 ……。


 ……そうなので、『よく喋る子』という普段とは真逆ともいえるイメージを、ママに植え付けていたのだ。因みに、因みにだね、ママと千佳は初対面なのだ。でもでもでも、どう思ったのだろう? ある日突然、僕にソックリな子が訪ねに来られて、



 ――目を疑ったのではないだろうか?


 瞬間移動説や分身の術説、ETCエトセトラ……と、冗談はさておき、ママは何の驚きもなく僕のクラスメイト、または可奈と同様、僕のお友達として接していたそうだ。


 ママと初対面なら、


 千佳が僕のお家を訪ねに来られたのは、今日が初めてのことで、……ちょうど可奈が僕を引っ叩いた時だ。その直後の両者の泣き声も手伝って、千佳はこの部屋、僕の部屋、襖の前に立ち尽くして開けるのを戸惑っていた。……そこでママは、


「落ち着くまで、奥でお茶にしましょうか。おやつもあるからね」


「うん!」……まあ、そんな運びとなっていたのだ。


 でも結局、襖を開けると、今度はキスシーン。それも濃厚な……を、目の当たりにすることとなった。なら、可奈と僕の一連の場面は、どれも過激なシーンが満載だ。


 ……そんなこんなで日が変わり、朝を迎えて七時少し前、スマホが音を立てる。それも立て続けに二件! ……可奈と千佳、見事に僕の風邪がうつって欠席の宣言をした。



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