第百二十六回 帰り道、帰ったあとで。


 可奈かなは心配していたけど、僕は早退、帰り道へと身を投じる。もう見えるものは真っ白ではなく、淡い灰色の世界。最寄りの駅で下車、広がる世界観。


 エッセイの名は『りかのじかん』


 それは、僕が見て感じた世界を描いたものだ。次第に銀杏並木が似合う季節へと変化してゆく、今歩いている道。……少し寒い。いや、寒さの種類が違う。悪寒と思われる。


 ……おかしい僕の身体。


 リュックを背負いながらも、ガタガタ震える。前回にも語ったけど、時系列の関係もあり念の為もう一度、――九月も過ぎ、今はもう十月も半ば。それなのに進まなくて、泣いちゃう日もあって、……エッセイとは別の、僕の青春物語。


 例えるなら、または題すればこそ、


 ――こうだ! 『梨花りかが描きたい物語』


 そう名付けた。……これは内緒だけど、ネーミングセンスは、きっとIMイニシャルエムさんには負けていない。う~む、まあまあまあ、団栗の背比べ、或いは同じくらいかもかも。


 それ以上の論議は御法度。PNペンネームは、もちろん変えず『りか』のまま。……だけど、タイトルでは敢えて漢字二文字を用いた。このお話には、バンプラも登場する。未来みらいさんをモデルとしたキャラも登場する。僕は、せめてこのお話の中だけでも親子の再会。


 こちらのコンテストでの優勝は、至難の業……それは知っている。


 そちらのコンテストでも優勝を逃して……って、そんなことはわかっていた。わかっていたはずだけど、それなのに悲しくて、皮肉で笑っていたのに、泣いちゃった。



 ……ほんと、やなくらい、


 僕は、泣き虫になっちゃった。……思い出せばこそ、また。玄関の前なのに。


「あらあら、とにかく早く上がりなさいね」と、ママ。……それ以上のことは、僕に訊かなかった。部屋にはパジャマ、お布団の用意までされていた。でも、やっぱり見ていられなかったのか、「ほらほら泣いてないで、さっさと着替えて寝る」と、ママは言った。



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