第六章 きらきら星と、梨花が描きたい物語。

第百二十七回 振り返り、今日を振り返る。(……コッソリ、補足も兼ねて)


 ――それは、今日と同じシチュエーションだった。



 前々……つまり、第百二十四回の中盤あたりからの出来事で、理科の時間、場所は実験室。四角い窓から見える中庭、桜舞い散る頃にまで遡っていた。


 プラモデル……ここでは模型と例えるが、


 模型が大好きな僕だけど、……この日、人体模型が苦手になった。熱っぽいのも手伝ってか、Jソン並みに不気味に見えて、嘔吐程に……気持ち悪かった。――多分だけど、これが、理科が苦手になった瞬間だと思えてならない。


 そして同時に、

 可奈かなが、初めて僕に声をかけてくれた瞬間だった。


 今と違って、その頃は「藤岡ふじおかさん」「星野ほしのさん」という具合に呼び合っていた。出来事的には、そこが違うだけで、あとは不思議なくらい同じなのだ。……僕を保健室まで運んだのが、瑞希みずき先生ではなくて可奈だったのも。


 しかも背負って、

 理科の実験室の三階から、保健室のある一階まで。


 脇に挟まる体温計の表示は三十八度五分……ということもあり、可奈が心配する中、早退するところまで、まるで再現映像を見ているような感じさえも覚えていた。……だとしたら、枕を涙で濡らしながらも目を覚まして、暫くしての午後三時。


 ……やっぱり、


 やはり鳴った、インターホン。迅速な反応のママ。さらにやっぱり「梨花、お友達が来られたわよ」との言葉と同時に、このお部屋の襖が開いた。


 もし……もしもだよ、


 着替え中の場合、汗かいたから下着まで脱いでいたら……それに、お友達が男の子だったら、もう大変……まあまあまあ、そんなことはなくて……って、


 ――さあ、来られたお友達は誰でしょう? きっと察しは付くと思うけど。



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