第九十五回 PS、または追伸。


 ――それは、九月の風。

 ピンクのカーテン揺れるその向こうから、二学期の息吹を運んでくる。



 でも、僕の視線の先は、まだPCパソコンの画面。明日のために眠るには、まだ早い時刻。


 シャワーをした後でも、まだ眺めている。

 画面狭しと、意気揚々に踊る文字たちを。


 利用している小説サイトは書くと読むで『カクヨム』……僕は『りか』というPNペンネームで登録している。登録したばかりの頃は不定期な更新だったけど、あの大樹下での『八月二十四日の告白』以来、PVプレビュー上昇とともに毎日更新できるようになってきた。


 これも偏に読んでくれる人達と、応援してくれる人達があってのことだ。



 ……涙はなく、


 喜びの感謝あふれる。この上ない感謝の中で見る応援のハートと、そして貴重なコメントたち。――ちか。これが千佳ちかの登録したPNだ。PNといっても読専。颯爽たるコメント。「ありがとう」の一言だけど、嬉しい! 僕も颯爽たる「ありがとう」で返信。


 IKイニシャルケイさん。これは可奈かなのPN。「良かったね」から始まるMTマシンガントークならぬ、長文のメッセージ。……「あはっ」と笑い弾む。「頑張ろうね」を含めた返信。もう大丈夫のようだ。浴室で千佳を発見したショックから、もう立ち直ったようだ。……因みに可奈も読専、あのマシンガントークをもってすれば、エッセイも書けそうだ。


 IMイニシャルエムさん。トリを飾るのは、やはりこの人、瑞希みずき先生だ。


 ……あっ、その前に、


 病室のカーテンを旋風の如く開けた『千尋ちひろさん』という女性は、奇遇にもパパと同い年で、背中まである綺麗な黒い髪が印象的。やはり千佳のお母さんで間違いなかった。


 ……最初は、虐待込みの『ヤバ系の怖い人』と思ったけど、瑞希先生と一緒に病室から出て、……戻ってきた時には、優しそうな表情で、綺麗なお母さんに変わっていた。



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