第七十九回 やっぱり百合? その要素が満載だ。


 ――霧は、湯煙に変えながらも、目からビーム? 火花を散らす乙女が二人。



 文字通り、僕は一肌脱ぐ。……いやいや、脱がされた。二人は仲がいいのか? 阿吽の呼吸で呆気なくスパーンッと、気持ちの良い効果音を奏でながら僕の水着を脱がした。


 文字通り、いやいやそれ以上に、一糸も纏っていない。


「ほらほら、隠さない隠さない」


「女の子同士だから、恥ずかしがることないんだよ。僕たちも同じ。裸の付き合いなんだから。梨花りかのこと、頭の天辺から爪先まで、もう隅から隅まで丁重に洗ってあげるよ」


 と、僕に向けられる言葉たち。

 可奈かな千佳ちかも、消えた芭蕉ばしょうさんに匹敵するほど怖い顔。……とくに千佳。千佳も僕と同じボクッ娘。普段は口数リトル、表情の変化もリトル……なだけに、極端な変化なの。



「ちょっと千佳、ドサクサに紛れて何言ってるの? 梨花のこと隅々まで洗うのは、わたしの役目なの。わたしはね、あなた以上に梨花とは付き合い長いの。梨花の気持ちいい部分とか、……そのね、何もかも知ってるの」……って、言葉が詰まる可奈。ほんのり顔も赤くて、ちょっと怖い。で、千佳はそれ以上に顔を赤く、もう真っ赤っか。


「僕だって可奈に負けないよ。僕だって、梨花のこと大好きなんだから!」


 ――前回のサブタイトルは『ええっ!』だったけど、

 僕は、その前回以上に大きな声をもって「ええっ!」と、なった。


 そんな僕をよそに可奈は、

「何告白しちゃってるの? あなたは梨花の遠い親戚でしょ?」


 それに千佳まで、

「関係ないよ、梨花を愛する気持ちには」


 だからだからだから! 僕は意を決する。「もう僕のために喧嘩しないで! まず温泉に浸かろっ。それから二人仲良く僕のことを洗って」――案の定、二人ともニンマリだ。



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