第七十二回 僕らは三人、されど十八番は四倍。


 ――『七十二』という数字で連想すること。それは七百二十円。


 その四分の一は、何と百八十円。

 昔の百四十四分の一スケールの『バンプラ』の価格。……もちろん旧キット。



 ――そうだね、

 未来みらいさんのお父さんの世代かな?


 そのアニメが三作に渡る劇場版となり、社会現象にまで及ぶほどの大人気を獲得。そういえば、僕のパパが最初に見た映画がそうだった。まさにOST1st=ファーストの時代だった。



 ……いいなあ。


 その頃のことを、僕は知らない。

 その頃のことを、パパは話してくれた。――その頃のことの情報を得るには、ユーチューブという手段もあり、小型ではあるがTVを見るようなスタイルで、今朝もまたスマホとセットのタブレットを用いて、拝見させてもらっていた。


 その中でも衝撃的だったのは、コンテストとは別に、作っていたバンプラと同じものが……二十体ほどだったかな? 宇宙空間を綺麗に並び遊泳している。――だけど、それだけではない! 僕は熱の入った語りに酔いしれ、自己満足の世界へと入ってゆく。


 ストーリーも良好!


 戦争というものを、登場人物を通し繊細なまでに描かれている。登場するロボットの戦闘シーンはカッコいいけれど、登場人物におけるドラマの重厚感……涙する場面多し。


 感激で、グッと力を籠める、指先にまで。

 帰ったら、未来さんとまた語り合いたくなった。そんな折だ。


梨花りか、泳がないの?」と、声が聞こえる。


 可奈かなの声だ。――そしてここは、川だ。田舎ならではの澄んだ水。木漏れ日の下でキラキラ輝く。この近くに温泉もある。本当に……大自然に恵まれた、そんな場所なのだ。



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