第六十九回 梨花、大地に立つ。


 ――そりゃそうだ。下車したのだから。



 それに、僕だけではない。


 可奈かな千佳ちかも一緒。これからもまた、三人一緒。……夏休みだけではない。今となっては、もう四十七分も前になる。くどいようだけど、喫茶・海里マリンでのマリさんとの会話。殆どが可奈のマシンガントークを中心に話を進められるが、……それは、それはね、


 ボン! と、熱を帯びる。


 中学女子の恋愛に対する好奇心。何の弾みか、惚気るマリさん。――あの日、八月二十四日。伝説の大樹の下での告白は、何と、……実はマリさんが第一号だったのだ。



 白い顔が、ほんのり赤く、

 マリさん自身が、その時、何を言ったのかは飛んだようだけど、


「お前、これからも俺と、ずっと一緒にいろよな」という未来みらいさんの言葉は、今も残っていると言っていた。――その台詞、とても強引だけど、とてもカッコよくて、男の子に言われてみたいナンバーワンの台詞。僕が百合でなかったら、きっと憧れる台詞だ。


 ……だけども、

 その思いに通ずること、僕は言いたい。


 ――可奈。それから、とくに千佳。後ろ姿見ると、とくにそう思える。夏休みはずっとだけど、新学期を迎えてからも、二学期が始まってからも、ずっと一緒にいたい。


 僕たち三人。


 すれ違う人は……あまりいない。駅員さんの姿もなく、無人駅。


 のどかな風景……されど二〇二五年は、ここはテーマパーク。賑やかな風景へと年表のように、みるみると進化を遂げるだろう。ここは『府構想』が実現した世界で、僕たちが住んでいる所は『千里せんり府』という地名だ。三つの市が合併した姿。十四の町が内蔵されている。最寄りの駅から四つ目の駅のこの場所も、その中に含まれている。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る