第四十八回 見える景色は、憧れの世界。(別名、群像劇)


 ――この状態を保ったままで、本番を迎えたい。



 明日お家でお布団の中で目覚めた時には、もう本番が終わった余韻に浸ってパパと、残りの夏休みを満喫したい。……また一緒に、マルチメディアの中心部へ行きたい。


 プラモデル、一緒に作りたい。

 作り方、もっともっと教えてほしい。この間はスジ彫り、エアーブラシだった。


 ……ウズウズする。

 頭の中いっぱい広がっちゃった……。



梨花りかちゃん!」


 極めて『ギクッ』に近い『ドキッ』で、ヌッとそばにはマリさんの顔があった。


 ……集中が途切れていた。

 やだ、怒られちゃう。と、思っていたら、


「この劇はね、群像劇なの」


「……群像劇?」

 と、聞きなれない言葉に思わず復唱。或いは訊き返し?


「うん、群像劇。主役は梨花ちゃんだけど、ここにいる十五人ラガーマンが、それぞれの役割というドラマを演じて、その集大成が本番なの。だからね、楽しいのはこれからだよ!」


 マリさんのその言葉に、その笑顔。


 心が奮えるのを感じて、まだスポットは、まだ窓からの日差しを利用したナチュラルな光源。本番近しと同様に流る午後近しの風、それらに心躍る中を、


「はい!」

 と、一纏めにした返事。


 制服なければまだ、我ながら小学生に見える容姿だけど、高校球児にも似た爽やかさを意識する。そのイメージが、この体育館に広がった。――「もうすぐお昼だね!」



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