第7話 戦利品
悪魔だ。え、悪魔なの? 美夜子さんが悪魔って言ってたから悪魔なのだろう。うん、きっとそうだ。でも、牛の頭をしていて、巨大なこいつは、悪魔と言ってよいものなのか。まあ、それはいい。
街はひどい有り様だ。街と言えないレベルにまでぶっ壊れている。住民も大半が死んだだろう。推測だから、助かっているならば喜ばしい限りだ。そして、プレイヤー。瀕死である。おお、高レベルのプレイヤーしかいないじゃん。こんな言い方は失礼だろうけど、そうか、死んじゃったのか、弱いやつらは。しかし、なんでHPが1なんだ、全員。スキルかなにかかな。
とにかく、助けなければならない。魔法で打っ放かな。
街を見渡せるところにいるから魔法がいい。高台、と言うのだろうか。ここから見る街はさぞかし綺麗なのだろう──けれど、その姿は既にない。
私は、魔法を何にするか選ぶ。悪魔だから、神聖魔法がいいから、【エンジェル・ブレス】だね。
さっそく──と、おっと、危ない。メイド服でしかも顔バレするとなれば、目立ってしまう。確か、ローブがあったはず。途中で拾ったローブである。
それを着ると、ステータスをオープンする。なんとかいけるかな。なんとか? んー、わからん。あ、プレイヤーのステータス見ればいいか。
そう思っていると、悪魔が魔法を撃ち出した。咄嗟に【ファインズ】を発動させ、悪魔が放った火の玉を消滅させた。霧散させたと言ったほうがいいかな。
危ない、危ない。さて、倒すかな──って、あれ?
お嬢様? と、彩花さんだ。ふえっ、トッププレイヤーなのかな。レベルが高い。あ、お嬢様がこっちも見てる。二人もリアルモジュールにしたんだ。気づいてないよね?
うし、悪魔が混乱しているし、今のうちか。
「【エンジェル・ブレス】」
唱え、悪魔の上半身が霧散した。
え!? こんな威力があるの!? 神聖魔法だからとかじゃないんじゃ・・・・・。ま、まあ、いいけど。なんか、魔法って、ちょーいいね。
んー、面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だから、この街を離れよう。確か、王都ってこっちだったよねー。
私は何事もなかったように歩き出した。
◇◇◇
草原が広がっている。
おお、と声が漏れる。ここらで昼寝でもしようかな。眠いし。ちょっと休憩しよう。
確か、悪魔討伐の戦利品があったはず。
ボックスを開いて受領する。称号やスキルも貰ったらしく、一応見ておこうと思う。
<悪魔の血×10>
何に使うというの、これ。10もいらないよ。あと、何色なの? 赤? 青? 紫? オーロラ? ・・・・・・ォォォォエエエエエ。私がオーロラだった。想像したら気持ち悪くなった・・・・・・。
<悪魔の悪魔×1>
意味がわからない。悪魔に悪魔・・・・・・マトリョーシカなのかな? 実物を見なければ想像つかない。そして、見たくもない。何に使うのよ。説明は読まないでおこう。ツッコミ過ぎて死ぬかもしれない。
<悪魔の目玉×1>
目玉って何に使うのよ。素材なのかな、これは。──あ、説明見てしまった。
<悪魔の目玉/悪魔の左の目玉。悪魔の眷属が封印されている。その眷属は悪魔よりも強すぎるために、封印された。時々、目玉が動き出すこともあるため、ストレージにいれていたとしても気を付けたほうがよいだろう。喰われるかもしれない>
こわっ! こわっ! こわっ!
動くの!? 封印されてるんじゃないの!? あ、あれかな。封印しても意識はあるやつ。その上体は動くという・・・・・・。ひとりでに動く目玉。ホラーだよ!
封印解除できるらしいけど、今はやめておこう。なに、悪魔よりも強い眷属だって? なにそれこわい。
<悪魔の手×2>
そのままドロップって、普通ゲームじゃあまりないよね。リアルならあるけど。私も見たことあるし。というか、私がしたんだけど。思ったんだけど、上半身消滅させたんだから、ドロップしないんじゃ? 下半身ならともかく、まあ、気にしたら駄目か。
<あっ! 熊!×1>
ん~、ちょっと表へ出ようか、運営。〝あっ! 熊!〟ってつまり、〝悪魔〟ってことだよね。これ、アイテムなの? ×1ってなってるし。悪魔なのに熊?
<あくまどーしょ×1>
意味がわからない。あ、〝悪魔〟と〝魔導書〟ってこと? 意味がわからない。繋げる必要がないのに。
<インスキル『悪魔召喚』>
真面過ぎて逆に疲れる。このままツッコミさせてほしかった。急にやめるのはなしでしょう。
それにしても、悪魔召喚ねぇ。倒した悪魔が出るってことはないよね? 牛頭野郎を召喚するのは御免被りたい。それに、あの巨躯を召喚したら、私まで巻き添え食らうよ。
<インスキル『悪魔召喚』/自身が思い描いた悪魔を50パーセントの確率で作成し、それを召喚する。また、自身が思い描いた悪魔の作成に失敗したとしても悪魔を召喚することは可能だが、どのような悪魔になるのか不明なため、お祈りをすることを推奨します>
はじめ、まともなんだろうなと思ったけど、そうでもなかったね。確率でって、五分五分だからまだいいけど、さすがにそれはないでしょう。それに最後の文。なんか、「絶対失敗する」とか思っているようにしか思えないんだけど。気のせい?
<インスキル『フレイヤー』>
火属性魔法のようだね。あれかな、悪魔が出した火の玉って、この『フレイヤー』ってやつなのかな。
<スキル『不可認識』>
チート感がぷんぷんする。案の定、ステータス、その他自分が指定したもの、ことを他人に認識させないスキルだった。まあ、ステータス誤魔化すのに使うだけだけど。他になんの用途があるのだろうか。
<称号≪悪魔殺し≫>
これはよくあるやつだよね。≪竜殺し≫とか≪神殺し≫とかと同じくらい有名。
<称号≪悪魔殺し≫/悪魔に対し、神聖攻撃に50000プラスする。また、闇属性魔法耐性を50000プラスする>
チートだね! なに考えてるんだろう、運営は。ま、神聖攻撃だけに補正がかかるから、まだいいけど。耐性も半端ない。これ、魔法耐性がないとダメなのかな? ──と、いつの間にか、『魔法攻撃緩和』がカンストしていて、『魔法耐性』に進化できるらしい。進化させて、次のを見る。
<称号≪別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?≫>
ネタ!? ネタだ!? なんで称号になってるの!? 称号の名前、ながっ! というか、いいの、これ。ちゃんと許可取ってるんだよね?
<称号≪別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?≫/味方に、囮や時間稼ぎを頼まれたとき、それに加え、「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」というセリフを言うときのみ防御力を10000プラスする。また、防御力以外のステータスを二分の一減らす(デメリット)>
・・・・・・ゴミ称号です。ツッコミたいところがいろいろあるけれど、まずひとつ、補正の発動条件! 囮や時間稼ぎって、まあ、このセリフはそういう状況で言ってたからいいけどさ、そのセリフを言わなければならないって言うのは、やめてほしい。私、厨二病じゃないし。ふたつ、防御力の補正! 極端すぎるんだよね。トッププレイヤーがどのくらいのステータスなのかは知らないけど、やりずきなのではないかな。みっつ、デメリット。このセリフを言った状況は、死ぬのをわかっていた上でのものだった。だから、それを再現(?)しようとしているのだと思うけどさ、ゲームだよ? やめて! ステータス二分の一とか痛いよ!
ふぅ、どうやら、これでおしまいのようだ。
王都に向かうとしよう。私は立ち上がると、メイド服のスキル『飛行』で空を駆けた。
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