第3話 キャラメイキング

 ──コード読み込み中……完了

 ──所持者、鳴度薫子……認識完了、異常なし

 ──所持者権限有効

 ──システム、ロード中……完了。フィールド、ロード中……完了。……

 ──メインサーバーの入室に伴い、アバターが必要です。移動しますか?


 → Y/N


 (目の前に何かが出てきた。パネル? とりあえず、イエスを押そう。体はある。うん、問題ない。動く。)


 薫子は、右手を動かし、イエスボタンを押す。すると、奥から──奥といってもどこが奥なのかはわからない──四方が黒に染まっていく。全てが真っ黒になると、奥から四方が白に染まっていった。完全に白に染まった後、大きな薄っぺらで透明なパネルが浮かび上がった。浮かび上がったというより、もとからそこにあったものを再構築したような感じだ。そして、これは浮いているのではなく、そこにあった。そこにあるのが当たり前かのようにあった。浮いてはいない。浮いているように見えるだけで、地面にあるのと同じようにそこにあった。


「えっと、リアルモジュールかはじめから作るか」


 パネルには、こう書いてあった。


 【リアルモジュール / はじめから作る】


 どちらかをタップすればいいのだろう、薫子はリアルモジュールを選んだ。

 画面が変わり、アバター全体図が出てきた。右端には身長などがあり、どうやら変更可能のようだった。

 薫子は、そのままの数字にして、決定ボタンを押した。

 すると、その場が暗くなった。いや、見えなくなった、と言ったほうが適切だろう。アバター構築の際に生じる〝ずれ〟のようなものだろう。リアルモジュールは元の体と同じだが、ゲーム仕様に体の細部が変わる。つまり、環境進化ということだ。

 薫子の視界が戻った。これでアバター構築は完了。次の設定に移行した。


 〈キャラクター名を設定してください〉


 名前かぁ。まぁ、これしかないわな。


〈メイドリス〉


 やはりこれでなくてはならない。私といえば、この名前。違うのにするべきだったかな? メイドリスの名前は、お嬢様も知っているし、こっちの方がいいよね。あと知っている人は、彩花さんと暁の魔女もそうだけど……あれに出てた人とか見てた人とかかな。問題はないと思うけど、用心はしてなくちゃ。

 はい次ー。あー、誕生日とか書かなきゃいけないの? ん、強制ではないんだ。なになに……『NPCやテイムモンスターなどに祝われます』か。別にいいか。とばすぞー。


 〈種族を選んでください〉


 待ってました、種族! 絶対人外がいいもんね。

 種族は以下のものが実装されている。


 □只人ヒューマン

 □ドワーフ

 □犬人

 □猫人

 □狸人

 □狐人

 □栗鼠人

 □エルフ

 □ダークエルフ

 □鬼

 □竜人

 □吸血鬼

 □スケルトン

 □ゾンビ

 □スライム


 これが今実装されているのだ。

 というか、あとの三つはなんですか? スケルトンって骨じゃん。ゾンビって昼間出れないじゃん。それは吸血鬼も同じだけど、おかしいよね。それに、スライムって。人型ではなくなってしまった。どの種族も進化するらしいから、スライムも人型になると思う。

 さてさて、何にしたものか。悩むなぁ。お嬢様は何にしたか聞けば良かったかな。とりあえず、人外にすることは決まってるんだけど……ん?


 『悩んだ方へ。▼をクリックしてください』


 なんか、あった。面白いことが起こりそうな予感がする。はぁい、ポチっとな。

 ……ダーツ?

 いつの間にか目の前には、ダーツセットがあった。的には、何も書かれていない──っお。なんか映った。それは文字だった。


 〈ランダムで種族を決めよう!〉

 つまり、投げて当てて、なにが出るかお楽しみ……というやつですか。いいかもしれない。


 〈ランダム選択を行う際、この後設定するステータスの配布ポイント500Pをランダム選択の代償として使用します〉


 つまり、ランダム選択は有料というわけだね。ポイントをお金として使用すると。

 リスクが大きすぎる。初期のステータスポイントの振り分けは、重要だ。レベルが結構上がれば問題ないが、きちんと振り分けしておかないと、初期プレイ時の戦闘が大変になったりする。だから、このランダム選択をする人はいないだろう。

 なので────────────あえてチャレンジします。


 ≫≫≫スキップ


 〈種族を決定しました。キャラクター設定に戻ります〉


 スキップとかなんとか書いてあったのは気にしないでね。気にしないでね。投げるだけのシーンって面白くないでしょ?

 うむ、何の種族になったのかな。


 〈反映完了しました〉


 よし、見せて!


 〈ステータス設定に移動します〉


 まてえい!? え、なんで!? 種族は!? 種族は!? 何なのさ!?

 うん、まぁ、いいか。後でわかるんだし。気に入らなければ、このアバター消して作り直せば済む話だしね。

 えーと、ステータス設定だっけ。


 〈STPステータスポイントをふって設定してください〉


 ……種族がわからないからふろうにもふれません!

 確か、基準となるステータスは、種族毎に違っていたはず。それがわかっていたところでどの種族かわからないんだけどね。

 種族には、種族特有のステータスがある。只人はバランス型。確か、エルフは、速度が特化されていたような気がする。ドワーフは力。といった具合だ。そうなると、HPも変わってくるので、防御力をあげたりしなければならない。

 なんだけどさ、種族わからないから無理なのよ。でもまあ、どんな種族にしたところで、戦闘方法は一択だ。それは、格闘。リアルでやっているから、やり易いと思う。剣とかも使ってみたけど、後でも何とかできるし。

 そもそも、ステータスポイントないんですけどー。


 テッテレー♪


 どこからか何か鳴った。レベルが上がったときとかに鳴る音だ。


 〈種族ランダム選択により、ステータスポイントが1000プレゼントします〉


 お、太っ腹だねぇ。元々あった500ポイントがなくなって0ポイントだったから、1000ポイントになった。よし、ふりましょう。


 ≫≫≫スキップ


 はい、終わりました。またか、と思った方、今後も出てくるでしょう。覚えておいてください。

 さて、次は……スキルですね。


 〈初期スキルを10セットしてください〉


 スキルスロットは、レベルが上がると増えていきます。はじめは10個スキルをセットできるみたいですね。

 ふむ、何にしようか。たくさんありすぎて選べない。


 ≫≫≫スキップ


 何度も何度もすみません。面倒だとかそういう理由ではないんですよ。ただ、決められなくて、つまーんないシーンしかお伝えできないからなのです。事実、スキル選びで一時間も使ってしまった。一時間というのは、ゲームの時間なので問題ありません。って、そこじゃない? あ、時間かけすぎだと? HAHAHA! 気のせいです。

 スキルも後程お見せしましょう。というか、私、何を選んだか全て把握してないんですけど。(時間かけすぎちゃったねっ!)


 〈これでキャラクター設定を終了します〉


 終わりましたか。ついに、私は何の種族になったのか知るときがやって来ました。さあ、『ひゃっほぉい!』となる種族を是非!


────────────────────────


キャラクターネーム:メイドリス

種族:エルファー Lv0

性別:女

属性:全


HP:1000/1000

MP:500/500

STR:3900

DEF:50

INT:100

AGI:500

DEX:100

LUC:10



スキル/

 『鑑定Lv1』『看破Lv1』『気配察知Lv1』『回避率Lv1』『攻撃力アップLv1』『ステップLv1』『殴打Lv1』『給仕Lv1』『掃除Lv1』『料理Lv1』


種族スキル/

『魔の力Lv1』『黒霧Lv1』『幻想Lv1』『魔法攻撃緩和Lv1』『闇耐性Lv1』『光耐性Lv1』『物理攻撃緩和Lv1』『状態異常緩和Lv1』


称号/


装備/

薄汚れた白いTシャツ [レア度:F]

薄汚れた茶色の外套  [レア度:F]

薄汚れた黒い長ズボン [レア度:F]


────────────────────────


 ちょいまち。なに、これ。

 種族、なに? エルファー? どこにもそんな種族書いてないんだけど。

 ヘルプがあったので押してみる。


 『種族ランダム選択を行うと、今表で実装されている種族以外(裏種族)も選択されます。それを当てた方は、運がいいです。消さずにプレイするのがオススメです』


 裏種族ってなによ……。情報流しておいたほうがいいのかな? ああ、いや、やめておこう。ゲームだからこういうのがあったほうが面白いし、このままにしとこ。

 エルファーの説明見ておこう。


────────────────────────


 エルファー ▼『科目はエルフ。エルフの成れの果て。如何にしてエルファーとなったかは不明。エルファーは、エルフの特徴である長い耳と羽がなく、人間にしか見えない。また、エルファーの数は非常に少なく、百兆人に一人の割合しか存在しない』


────────────────────────


 ものすごい種族を当ててしまったらしい。これで決まりだね。

 と、まだ疑問があるんだけど。ステータスがさ、ヤバイのよ。

 元々のステータスが


STR:100


DEF:50


INT:20


AGI:50


DEX:10


LUC:10


 だったんだけど、ここに1000ポイントをふったわけですよ。攻撃力を一番上げたかったから後回しにして、


DEF:50(+0P)→50


INT:20(+80P)→100


AGI:50(+450P)→500


DEX:10(+90)→100


LUC:10(+0)→10


 こうふりました。どれも1Pにつき1上がったのですが、STRだけ違ったのです。


STR:100(+3800P)→3900


 1Pで10も上がったのですよ。アハハハハ。

 チートとか言われそう。運営さん、何とかしてください。お願いしますよ。

 只人のステータスを基準にしているから一発でバレるよね、これ。

 ランダムで決めなければこんな数字は出ない。あ、私のせいじゃないね、これは。運営さんのミス。多分だけど、ランダム選択はする人がいない体で入れたんじゃないかな。いや、多分じゃないね。ステータスポイント全損の代わりってなってたから、いないよ。二倍になって返ってきたけど。運営さん、絶対驚いてるよね。


 思ったけれど、説明って読んだほうがいいね。モンスタースキルなんてあるんだねぇ。『魔の力』とか『黒霧』とかよくわからないけど、後で確認しよう。

 確認し終わったので、『次へ』のボタンをクリックする。


 〈アバター設定を保存しています◇◇◇◇◇◇◇◇完了しました。

 お待たせしました、メイドリス様。私、今回案内を勤めさせていただきました、フウリンカと申します〉


 うおっ。急に音声だ。女性だったかぁ。


 〈アンケートにご協力下さい〉


「いいですよー。じゃんじゃん聞いてください」


 〈わかりました、ありがとうございます。では、一つ目です。このゲームをやろうと思った理由は何ですか〉


「私がお仕えしていたお嬢様が一緒にやろうと誘ってくれたのがきっかけです。それと、ヘッドギアを作った旦那様からやってみてほしいと頼まれたからです」


〈メイドか何かだったのですか?〉


「はい、メイドでした。今は、家の都合でやめてしまいましたが、また雇ってもらえたらと思っています」


〈なるほど。それでは、二つ目です。ゲームはどのくらいやりますか?〉


「昔は結構やっていました。今は──というか、メイドをやっていたときは、仕事の合間にやってましたね」


〈ジャンルをお聞かせください〉


「格ゲーです。あと、ホラゲーやサバゲーなどを嗜んでおりました」


〈これが最後の質問です。このヴァーチャルの世界に何を望みますか〉


「そうですねぇ。自由に生きていける世界がいいなと思います。現実世界ではできないことがこの世界でできるので、羽目を外す人が多くいると思いますが、現実で格闘術を習っている私としては、ありがたいと思っています」


〈アンケートにご協力頂きありがとうございます〉


 アンケートでボーナスアイテムはなしか。


〈開始地点は、種族によって異なります。それではいい旅を〉


 その言葉を最後にして、世界が暗くなった。




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