第43話 遺体回収
今回は遺体がある事が分かっているので慎重な作業の中にも勢いが見られ、表面はやはり堅かったが少し掘ると以前掘り起こした場所だから安易に作業が進んだ。
突然スコップを置いた署員が大きい声で「遺体発見!この中にあります!」と叫び、後は小さなへらで遺跡調査の如く表面の土が慎重に取り除かれ、殆ど露出したところで、数枚の写真に収められた。
遺体には頭部が無く、なぜかその他の骨格は、鉈みたいな刃物で数個に切断されていた。
しかしやはり「髑髏」が言っていたとおり、首無し遺体が無残な姿で横たわっており、誰が灯したのか、ローソクの炎が輝き線香の香りが漂う中、各自黙祷を捧げた後、検死官がその骨を慎重に取り出し、全ての回収作業が終了したのである。
この遺体も十年前迄は、骨格の全てが意志どおりに活動しただろうに・・・
今は茶褐色に変色した只の物体となって皆の涙を誘い、改めて犯人に対する怒りを強く感じたものです。
また人の運命と死に場所にも色々あるが、この姿を見た身内方々のお気持ちを察すれば言葉で言い尽くせぬ哀れさを思い知らされました。
遺体は白地の布に包まれ、遺骨収集箱に納められたが、この時点で非科学的な方法で得た情報だといった理由と、その容疑者が今取り調べ中なので、荒木家には被害者が『荒木巌』である事を知らせる事が出来なかったのである。
自分の夫とも知らず村人と共に、この遺体を見送る荒木母娘の哀れな姿があった。
午後3時過ぎ、遺体は姫路署に搬送、専門家の手に委ねられ遺体の回収は終了した。
※
余談になりますが、牛舎で働いていた使用人の妻の話では
「働き始めた当初は気が付かなかったが暫くして、倉庫内で夜な夜な人がいるような気配と寒気が続き、長時間中で仕事をすると、決まったように首筋が痛みました。又、品物を動かす音が時々聞えてくることもありました。私はこれ迄も因果めいた話を聞けば、強い霊感を感じる体質で、日々の生活でも恐怖心に陥いり困る事も多々あります。今の霊症状から判断すればあの倉庫はかなり怖い霊が存在する場所で、何か重大で悲惨な事件が此処で起こり、その強い霊が取り付いて居ると感じました。建物の関係で家畜の霊かも知れないとも思いましたが、以前この場所で何んらかの事件があったと考えていました。だから私はこの場所を恐がり、倉庫の中での仕事は特に嫌がっていました」
と毎日不気味な事象に恐怖を感じていたらしいことがわかった。
遺体を前にして使用人は
「やはり床下に遺体が埋められていたとは?犠牲者には気の毒だが、汚物を垂れ流す床下での埋没これは浮かばれませんね。これで全ての怪奇現象からの謎が解け、忌わしい出来事からの開放出来るでしょう。おそらく霊感の強い妻も喜んでいるはずです」
と述べた。
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