第23話 被害者捜査 荒木巌(二)

荒木の性格を纏めれば次のとおりです。


1 人望は厚いが、横柄な態度が多く、すでに定まった事を破談に持ち込む事もあった。


2 酒乱気味あり、飲酒三合位で威圧的になることがあった。また些細な事から論争も多く、場合により暴力沙汰を起し、不利な取引をされた場合はいつまでもも根に持つ性格である。


3 総合的に短気で、非協力的な性格と人々から見られていた。


昭和21年7月23日

調書作成  加古川警察署警部 三宅 剛志 


注: これ以外に荒木巌が、国鉄青野ヶ原駅へ降りて行く姿を目撃した村人達と、当時改札をしていた駅員より調書が取られ、種々検討した結果、加古川駅迄の生存が確認されていた。




また荒木は不参加であった慰労会の後、加古川市に住む愛人「谷本幸代」宅に立ち寄る事予定であったこともわかった。


谷本から事情聴取及び家宅捜査を行い、近所の人々からも聞き取り調査を行ったが、荒木が伺った形跡が無く、目撃した者もいなかったので「谷本幸代は、本事件に関与なし」と断定されていた。


「有難う御座いました。色々参考になりました。又後日お伺いすると思いますが宜しく、お願い致します。ところでこの調書を書いた三宅警部さんは、現在も健在でしょうか?」

と水野捜査課長は最後に尋ねた。


「はい、元々健康な方だから、今も元気だと聞いています。昨年暮れのOB会にも出席され最近は孫と明石城公園を散歩するのが日課とか。また明石の浜で釣りをして、自分の時間を楽しんでいる様子を聞きました。住所は、確か明石の天文科学館の近くと聞いています」

と答え、担当者は取り出した書類を収めていた。


お礼を述べた二人は午後2時過ぎ小野署を出たが、外は湿気が多く、今にも一雨来そうであった。






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