第24話 捜査方法の激変
「やはりあの自衛官の言うとおり、被害者の荒木は実存していましたね?」
水野の部下が興奮ぎみに尋ねた。
「うん、たしかに存在したな。しかし君はどう思う?我々は職業上、立証の取れない非科学的な話にはおいそれと同調出来ない立場だが・・・」
水野がつぶやいた。
「しかし非科学的とはいえ、事実は事実です」
「今日の調査の結果、被害者は間違い無く存在し、何らかの事件に巻きこまれ、今日まで生死不明のまま忘れ去られようとしていた。しかしこの事実を知った今、信じたくはないが『髑髏との会話』も含めて否定できなくなった」
「まったくです」
「こんな非科学的経験は生まれて始めてだ!実に不思議な事だ!君はどう思う?」
「どうもこうも我々は目で見たことを信じるしかありません」
「そのとおりだ。しかしこれが全て事実なら、警察の今後の捜査活動に多大な変化をもたらす事だろう・・・」
「それは間違いないと思います」
「あの自衛官が井戸に落ち込んだ事で、時効寸前に荒木を殺害した犯人の逮捕ができるかも知れない。ましてやその原因が本人の荒木の『髑髏』が伝えたとは・・・」
水野はまだ驚愕の事実を受け入れられないようであった。
「課長、やはりこの世では常識では考えられない事が存在するのかも知れないですね。死亡しても、人は恨み辛み憎しみ等の感情を、表現する事が出来るのですね」
「まったく前代未聞だな」
「しかしもしこれが事実なら、今後の捜査活動は楽になりますね。長期間署員の大半が、日夜の裏取り捜査に取り組み、しかも大半は空振りで身心共に疲れ嘆き苦しむ。さらに時間との戦い、これらからすべて開放されますね」
「ああ、そこにある遺体から直接、犯人と被害者の氏名及び事件の内容が直ぐ分かるのなら裏取りの苦労がなくなり大助かりだな」
「そうですね。髑髏さえあれば、それから直接聞き取りして犯人逮捕!今迄のような聞き取り捜査が省け、スピーデーに解決。これは大助かりですが、今後の殺人現場には首無し遺体が増える事も確かですね」
「そうだな。首無し遺体は大変だと思うな。新しい遺体だと特徴も掴めるが、頭蓋骨の無い骨格のみの捜査ともなれば、ほぼ皆同じだから医学的に特徴の割り出しは難しいな」
「そうですね」
「何れにしろ、今後の捜査活動に大きな変化をもたらす事は間違いないだろう。山と積まれた骨格の中で鑑識捜査官の鑑定作業が目に浮かぶな」
「鑑識官大忙しですか」
「時間も早いので、姫路署に出向いてみよう。各班、新しい情報がとれているだろうからな。今後は、それに基付いた行動予定の割り振りもあるだろう」
蒸し暑い砂埃の道の長距離を歩いた2人の前に国鉄「青野ヶ原駅」の駅舎が見えてきた。
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