第12話 病院での聞き取り調査

午前 10時過ぎ


廊下を歩く賑やかな足音がして教育隊長以下、数名の隊員が来室。

ベットで寝ている私を覗き込んでいた。


隊長が「隊のみんなが急にいなくなったので心配していたが、君の無事な姿を見て安心したよ!本当に良かった」と嬉しそうに話しかけてきた。


「ありがとうございます。古い井戸があったとは迂闊でした。おかげ様で休止に一生を得ました」


「実は今朝3時過ぎに、急報を受けた小田二尉が病院を伺い、看護婦さんから当時の様子を聞いたらしい。なんでも君が小さなスコップを持って突然来院したので皆は、『出た!幽霊か?』と驚きバタバタしたが、君から話を聞いて落ち着くと、そこは看護婦の使命感が働き懸命に介護したと聞かさせれたらしい」


「そうですか、私が眠っている間にすでに小田二尉が来てくれてたんですね」


「彼は、君が命に別条なく、現在応急手当を受け睡眠中と聞かされたので、今朝の訪問時間帯を聞き私が今来た次第だ」


「そうだったんですね、二尉によろしくお伝えください」

部隊内でも人一倍部下思いの小田二尉のアバタ顔が目に浮かんだ。


「来るのが遅れたが、体調の方はどうだ?どこか痛むところはないか?話が出来るか?」

と言葉を掛け、さらに事故に付いて尋ねられた。


「皆様に御心配とご迷惑をお掛けしました。体はこのとおり心配いりませんし、勿論話もできます」


私は昨夜の出来事の概要を述べた。


話を伺うと最後の分隊員が『千代の墓』を過ぎ公道に入る時点で、私の不在に気付き即座に訓練を中止したそうです。


その後、演習場内外をくまなく捜したと聞かされ、私の不注意で皆様にご迷惑をかけ訓練教育課程の中、大事な夜間訓練を中止に追いやった事を謝った。


さらに今の現場の状況を尋ねると

「現場は小田二尉の指揮で、小銃等官給品の回収作業に入っている」と聞かされた。


私は三人との約束を思い出し

「直ちに作業を中止して現場保存を優先してください」

と隊長に願い出た。


すると隊長は、

「何、中止?何故だ?井戸の中に何かあるのか!」

と尋ねてきた。


「詳しい事は後程申し上げます。あの井戸底に『三体の遺体』があるので、早急に警察に連絡して下さい、それと排水のために消防自動車の手配もお願いします」


「何!井戸底に遺体があるのか?よくも暗闇の中で発見できたものだな。おい、川端二曹!現地に無線で、作業中止と現場保存の連絡をすぐに取れ!必要なら今聞いた事を伝えてよし」


「川端二曹了解しました、直ちに連絡します」

一番年の若い川端二曹は、電流が走ったかのように敬礼して無線機に取り付いた。


この会話のやり取りを聞いていた他の隊員達にも、動揺が走り病室内は騒然となった。


その頃、現場では井戸に足場を作り、装備品の回収作業を始めていたが、無線で中止命令が入り、事情を知った現場でも大騒ぎとなった。

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