第8話 井戸の中での会話(二)


「富永正治さんも殺された?分かりました。皆さんとの会話にも少しは慣れ、内容も何とか聞き取れます。私は直ちに警察に知らせるので、今一度、犯人の名前と貴方達の、生前の住所及び、被害者と断定出来る、証拠の品物等を簡単に教えて下さい」


このころにはすでに会話の内容がクリアに聞こえていた。


「分かった!俺は『荒木巌』兵庫県加古郡高岡村出身、犯人は『渋谷熊吉』。やつの住所は俺の家のすぐ下じゃ、俺の特徴は、右奥上下に一本ずつ、金歯がある。小野市内の山本歯科で確認してくれ!」


「荒木巌、金歯使用、山本歯科、犯人は、渋谷熊吉ですね。はい次はたしか佐川さんですね」


「そうだ!私は『佐川清正』です。姫路部隊見習士官、本籍地、香川県善通寺市、本官の特徴は、下顎両方共親知らず抜歯、それに証拠品として弾帯右側ポケットに『佐川』の刻印の印鑑があるはず。私を殺した犯人は『三村義人』、住所は岡山県津山市と覚えている以上」


「はい、『佐川清正』姫路部隊…善通寺市、抜歯、印鑑、三村軍曹、次は冨永さんですね?」


「ハイ、富永です。私は本籍、兵庫県加古郡高岡村、神戸大学生、父は当時村長をしていた。」


「村長…神戸大学生、高岡村、要点は覚えたが、富永さん、これ以外に本人と証明できる品物等は有りますか?」


「品物?そうだ『ベルトのバックル』がある。神戸大学の校章入り『神大』を基礎に作っているので分かるはず」


「はい、『神大』の校章入りバックル…分かりました。後日貴方達と同じように会話が出来るのでしょうか?」


「会話ができたるかは分からないが?…とにかく早く此処から出してくれ!」


「犯人を捜し逮捕して下さい。親に連絡を頼むよ」


「何でも協力します。早く親元に帰りたい。宜しく頼みます」


「皆様のお話を聞き、辛いお気持を察し申し上げます。今後皆様のご無念を晴らす為、今から脱出に集中するので、暫く会話を中止します」


「分かった。荒木だが、俺の遺体は牛舎に埋めているとか?探してくれ」


「ここから出たい!親に知らせてくれ」


「憎い犯人を逮捕してくれ」


「ここは寒い。早く何とかしてくれ」


「皆辛い、哀しい思いをしている。助けてくれ」


「わかりました、みなさん。ここから無事出たなら全て約束は果たします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る