第7話 井戸の中での会話(一)

しばらくして聞き取り難いが、何なら会話らしき声が聞こえてきた。


「そう・・こ・にい・・ぞ!」

と大きな声が返ってきた。


「えっ!会話が出来る?」

まず私は意思の疎通ができることに驚いた。


「本当に誰か居るのですね?」

と声を掛けると


「そ・だ」

と再び返事があり、


「人と喋・る?…」


「お前・・だ?!だれ・・にやら・た」

と先程とは違い、若い声が返ってきた。


「やられた?私は訓練中、誤ってこの井戸に落ち込みました」


「そ・か・暖・で・・良かった・・」

 又聞き取りにくい口調で、別の声が聞えていか。


私は、我が身の危険を忘れ思い切って以下の問答を試みた。 


「皆様に尋ねますが、私の言葉が分りますか?貴方達の言葉には、意味不明な点もありますが、なんとか理解できます。何人か居るようですね。一人ずつ姓名を云って下さい!」


すると同時に声えが返ってきた。


「同時に話されても分らないので、そうですね・・・いちばん年長者の方から応答して下さい。」


「よし・・った。」

 

「わ・りま・・ほん・・は・しが・・すか」


「それでは、年長者の方から、姓名を云って下さい、それと全部で何人の方がいるのですか?」


「わし・高岡村『荒木巌』、仕事は博労(注:ばくろう 牛馬などの家畜の売買)や。年・44歳じや・・こ・には3人・る」


「エェ!三人もいるのですか!まずは荒木さんですね。次の方、同じ質問です。」


「本官、さが・きょ・さ・21歳」


「佐川?さんですか?仔細は後程聞きます、次の方同じ質問です。」


「とみ・が・せいじ、20歳・す、わ・しも殺され・・投げこ・・た。


このころには私には恐怖心はすでに無くなっていました。

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