第6話 怪異遭遇
「人が落・込んだ・?」
「そのよ・だあわて・いる」
「さき・・いろ・・とが・・いた・だ・・おち・の・」
「ど・やら新人・きた・・うだ…」
「兵の・・だな…」
「そう何・慌て・いるら・い?」
一部言葉が抜けて聞き取りにくいが、銃の「遊底」を開放して水中に沈め、水面上に出ている銃口に耳を当てて聞くと、明らかに自分の事を云っている様子てある。
瞬時悪寒が走ると共に、不安が益々つのり「はたしてこんな事があるのか?井戸底から人の声とは?これが事実なら此処は墓場なのか?」
冷静に考えてみると、今度は今迄と違った新たな恐怖が襲ってきたのである。
子供のころ、お祖父さん達からお化けや幽霊の話を聞かされて「この世にそんな怖い所があるのか?怖い幽霊もいるのか?」などと幼心で悩み、夜になるとそれらの話を思いだしてトイレに行くのも怖く恐ろしい日々を経験した。
今の私には「心霊現象、心霊写真、お化け屋敷」などの単語が浮かんできた。
私は、青森県恐山の「イタコ」の話とか、霊能者が故人を降霊させ会話する現実的要素を含めた話を聞かされても全て想像の世界と思っていた。
しかし今、井戸底で死人のような会話を聞く異常現象を体験している事自体が不思議で、正に別世界のように感じた。
この不気味な環境の中でも、自分なりに心を落ち着つかせ冷静な判断と、行動をしているつもりの己を、自から疑い恐怖と不安で理性を失う程だった。
この恐怖の中、今は事実確認に心が動き、銃を水中に沈め銃口に口を当てて
「其処に誰か居ますか!?」
と尋ねた。
瞬時会話が途絶え、静寂の空間が広がった。
霊気漂う不気味な井戸は、蚊の羽音のみ聞えていた。
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