第2話 陸上自衛官 鬼頭 勝(きとう まさる)
「お待せしました!
皆様ご静粛に、ご静粛にお願いします」
広い姫路公会堂の館内にマイクを通した音声が響いた。
「これより『ご遺体解明委員会』を代表されて、科学技術庁ご在籍の近藤正孝氏による協議結果のご報告をして頂きます」
この言葉に、さきほどまでざわついていた会場内が一斉に静まった。
「それでは、近藤様よろしくお願い致します」
壇上に指名された近藤氏がゆっくりと登壇した。
「僭越で御座いますが、わたくしが只今紹介にあずかりました近藤でございます」
会場内が近藤氏の次の言葉を待った。
近藤氏は「ごほん」と咳を一回したあと
「えー、解明結果をお伝え致します」
「ゴクリ」
新聞記者の生唾を飲み込む音がした。
「皆様ご承知のとおり『奇跡体験の鬼頭勝氏』が髑髏から得た情報の信憑性について、委員方々から『非科学的事項故に疑問が多い』などの意見もありましたが、先刻この場で行った『現物聞き取り検証』での高い解明率等を含め、全ての事項に関し評議検討した決果、多数の方々の賛同を得て自衛官『鬼頭氏』は間違いなく『髑髏と会話可能な人物』と認定された事を、御報告申し上げます」
この報告と同時に各新聞記者のカメラが私に集中、無数のフラッシュがたかれて会場はにわかに騒然となった。
「明日の朝刊に間に合わせろ!」
「スクープだ!編集長にすぐに電話しろ!」
「早く車を回せ!」
各新聞記者の怒号が飛び交う。
私は二ヶ月前の夜間訓練で演習場の井戸に転落、その中で起きた非科学的恐怖の体験を思い出していた。
私の名前は鬼頭勝(きとう まさる)。
陸上自衛隊、姫路大隊に所属する幹部候補生である。
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