第13話 まさかのお泊まりです。 2

お泊まり初日の朝。

私は落ち着かずに、ソワソワしていた。

いつもは光が来ても待たせてしまうことが多い私だが、今日は光が来る時間より随分早く準備を終わらせていた。


「別に急ぐ必要ないんだけどね、うん」


ダイニングチェアに腰掛けて、足をブラブラさせながら呟く。


一時期距離を置いたことはあったが、毎朝一緒に学校に行く習慣は、小学生から一度も途切れたことがない。毎朝、ちゃんと私を迎えに来てくれる。光に感謝。


ピーンポーンピーンポーン


ひ、光かな……


鞄と水筒を持って玄関に出た。

ちょっと緊張する。


「光、おはよう」


「お、おはよう。旅行の件、知ってるか?」


「うん。よろしく」


「こちらこそ、お世話になります」


私たちらしくない、ご丁寧なやりとり。


玄関を出て、お泊まりについての話をする。

色々決めておかなきゃいけないこともあるしね。


玄関を出て、隣を歩く光に聞く。


「あのさ、何か食べたいものとかある?」


朝、ダイニングテーブルにご飯は作ってねとの置き手紙があった。


「食いたいもん……唐揚げ」


光は唐揚げをご所望。

うーん。唐揚げくらいなら作れるかな。

お母さんの手伝いもしたことがあるし、工程くらいは覚えている。


「じゃあスーパーへ材料買いに行かなくちゃね」


「え?作んの?買うんじゃなくて?」


光のポカンとした顔。どうやら出来ているものを買うと思っていたらしい。


「何よ。私が作るんじゃ不満?」


「いや。そうじゃないけどさ……いや、お願いします……」


私たちらしくないテンポ。

お互い意識しあってるせいかしらね……


「あ。あと、彩ちゃんと莉央にお泊まりのこと言ってもいい?」


「な、なんで?言う必要ないだろ」


たじろぐ光。


「だって。後々バレた方が嫌じゃない。中学生の男女がお泊まりよ?光と私の関係じゃなかったらヤバい行為だわ。あの二人になんて問い詰められるか」


「先回りして言っとくってことか。やましいことはありませんよ、と」


「そういうこと」


「他のやつに言うなと二人に言っとけ。それなら許す」 


光も納得してくれたみたいだ。


「でも急すぎるよな。母さんたちは何考えてんのか……」


「本当よね……言うタイミングは沢山あったでしょうに」


光と泊まるのが嫌な訳じゃない。ただ急すぎるだけなのだ。


大雑把おおざっぱなことは決め終わったところで、タイミング良く学校に到着。



学校の時計はいつもより10分も早い時間を指していた。

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