第12話 光 side 

照葉とは、昔っからの仲だった。


お互い、一緒に居るのが当たり前で。

一時期周りに冷やかされ、距離を置くことはあったが、家が隣なので嫌でも関わることになる。だが、俺は嫌だと思ったことはない。


世話を焼いているのは俺の方だが、それも俺がしたくてしているようなもので。


照葉は社交的な性格をしていて、誰にでも好かれるし、照葉も懐くタイプだ。もちろん、悠馬や俺以外の男子とも普通に話す。それに対して嫉妬の念を抱いたりしたことは、ない。

好きだったら嫉妬するもんだと兄貴は言ってたし。



宿題をしながらそんなことを考える。


コンコン、とドアをノックする音。


「光、ちょっといい?」


「ああ、うん」


母親が少し嬉しそうな顔をしながら部屋に入ってくる。

何だ?


「明日から、照ちゃんと二日間。お留守番しててくれないかしら。」


「は?なんで照葉となんだよ。留守番くらい俺一人でも出来るし」


いきなり、意味がわからん。


「それがね、昨日か一昨日に、鈴ちゃんが応募してた何かの何かで二等の旅行券が当たったらしいのよ」


何だよ。何かの何かって。しかも一等じゃなくて二等かよ。なのに旅行券貰えちゃうのかよ。


照葉のお母さんの名前は鈴さんという。つまり、照葉のお母さんに、その旅行に誘われた、と……


「だから、照ちゃんも一人になっちゃうの。中学生の女の子が一人なんて、危ないでしょう?いっそのこと二人でお留守番させようってことになって」


そうは言われても。照葉は嫌がってないのか?

それに、照葉だったら侵入者を返り討ちにしそうなものだが。


「照ちゃんのお家に泊まらせてもらうことになってるから、明日学校から帰ったら、着替えとか歯ブラシとかもって照ちゃん家に行ってね」


「いや、でも……」


「あ、もしかして。光も思春期の男の子だものね。照ちゃんにそういう気持ちを抱いても仕方がな───」


「いや!?全ッ然!?全ッ然大丈夫だけど?」


分かりやすく動揺を示してしまう俺。

泊まるくらい、小さい頃に何度もしている。今更何だって話だ。


「じゃあ、明日は朝からお母さんいないから。朝ご飯の準備はしとくね」


「……ああ」


まさか、こんなことになってしまうとは。

まあ、別になんともないけど……?

なるべく何も考えないように、宿題の最後の一問を解き終わり、風呂に入ってさっさと布団に潜った。

目覚まし時計を六時半にセットし、目をつぶる。


しかし。


「なかなか眠れんな……」


理由は明白。


音楽でも聞くかと体を起こし、スマホに入れている音楽アプリを起動させ、

「眠れない夜に!リラックスできる音楽集!!」

というプレイリストをタップ。

ゆっくりとした洋楽が流れてきて、再度目を瞑る。



しかし。


「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」


驚いて体がビクッとなる。


なんだよ、こんな夜中に……

だけど、あの声は、紛れもなく、照葉のものだ。隣から聞こえてきたし。


多分、俺と同じく、留守番の事を聞かされ、驚いたのだろう。


「チッ。うるせえなぁ……近所迷惑だろ」


うるせえなとか言いながらも、自然と笑みがこぼれてしまう俺。


変だけど、なんか安心した。


もういいやとプレイリストをポチッと止め、次こそはと布団に潜り込む。



意外と、スッと眠ることができた。

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