第9話 光とドッジボール 1

私たちの家の方向は小学生以下の子が多く、中学生は私たちとあと二人くらい。

なので下校中に誰かとすれ違うことはない。


しばらく、お互い無言で歩いていた。

無言でも、光となら心地良い。

光も、そう思ってくれているだろうか。

だったらいいな。


公園から、楽しそうな子供たちの声がする。

ここの地域の子供たちによく使われている公園で、私も時々ここへ来る。流石に遊具で遊びはしないけれど。

ちょうど公園を通り過ぎようとした時だ。


「あ!照葉おねーちゃんだー!」


「光くんもいる!」


ボール遊びをしていた子たちが、突進してきそうな勢いでこちらへ走ってきた!


「わっ!」


現に突進されて、みぞおちに頭突きを食らった私。隣の光は鞄でガードを作っていた。


「ねーねー、二人も一緒に遊ぼー?」


「今ドッジボールしてるの!」


二人の女の子が無邪気な声で私たちを誘う。

かわいい……


「光、どうする?私はウェルカムだけど」


「……やってやろうじゃねぇか」


あ。光にスイッチが入った。

光はクールそうに見えて、実は負けず嫌い。

スイッチが入ると、勝てるまでやるタイプ。


ドッジボールなんて久しぶりだ。

中一の頃に授業でやった時以来かしら。

相手チームを全員ぶっ倒した記憶がある。

私も俄然やる気が湧いてきた。


「よーし!どういうメンバー分け?」


私も光もノリノリで子どもたちの輪に入る。


「えっとねー、男子VS女子でやってたの」


「でも女子が弱いから、チーム替えしよっかなって言ってたんだ」


「ふーん、チーム替えしなくても、私が来たからには勝たせてみせるわ!」


「お、いいのか照葉?男子チームには俺が入るぞ?」


「ぜーんぜん大丈夫よ。私を舐めないでよね~!」


てな訳で、男子チームに光が、女子チームに私が入り、5対5となる。

鞄を下ろし、肩や腕を回す。

外野を決め、光とじゃんけん。

じゃんけんで勝った私がまずボールを構え─── バトル、スタート!


初っ端から光を狙って豪速球を投げる。野球じゃないけど。


だけど光は抱きかかえるようにして、私のボールを真正面から受け止める。

流石は光。他の奴らみたいに、すぐぶっ倒れてはくれないわね。


光が私の足を狙って投げてくる。

でも私は跳んでそれを避ける。


「ボール拾って!外野に渡しちゃだめよ!」


一人の女の子が線スレスレで拾ってくれる。

その子が外野に向かってボールを投げる。

敵に向かって投げるのが苦手なら、仲間に投げる。相手にボールが渡るのを避けるための手段の一つ。


外野の子が小さい男の子に向かってボールを投げる。

男の子がそれをぎりぎりで避け、ボールは女子チームの陣地までとんでくる。

ボールの威力が落ち、ころころと転がったボールを違う子が拾い、さっき狙われていた男の子に投げる。

男の子は先程避けたので油断していたのか、避けずに───当たった!


「「いえーい!!」


女子チーム全員で大喜び。

男子チームは悔しがっていた。


「くっそ……次頑張るぞ次!」


まだ負けた訳じゃないんだと光が励まし

───試合、再スタート!!

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