第8話 下校

「おーい、光~」


光を呼ぶ。

光はタオルで顔を拭きながら、よ!と。

部員と少し言葉を交わした後、光はこちらへ歩いてきた。

あの藤和君も一緒に歩いてくる。

藤和君もサッカー部である。


「今帰りか?」


「うん」


「どーせなら五人で途中まで帰りません?

道は全然違うけど」


と藤和君が。


確かに、私たちの通学路は別々だ。

藤和君と莉央は校門から出てすぐ左。

私と光と彩ちゃんはすぐ右に曲がる。


「「帰ろ帰ろ~!!」」


なのに彩ちゃんも莉央も、何故か超乗り気である。

何気にこっち見ながらニヤけてる。


「じゃ、荷物取ってくるから」


そう言って二人は部室へ荷物を取りに行った。


「五人で帰るのって、もしかして初めて?」


言われてみればそうだ。


「道はバラバラだけどね」


確かに。

皆で帰ると言ったって、校門までの数分である。

待てよ、ということはもしかして、いやもしかしなくとも、藤和君は莉央と帰りたかっただけなのでは……?


「ねぇ莉央」


「何照ちゃん」


「もしかして藤和君、莉央と帰りたかっただけなのかもしれないよ」


……数秒の沈黙。


「ふぇ!?」


莉央がすっとんきょうな声をあげる。


「な、なんで?」


「あー、五人で帰るって言っても、すぐに莉央と二人になるから、と?……ありえるね」


彩ちゃんも納得している。


「そーそーそーゆーこと~」


語尾を意味深に伸ばす。

莉央は面白い程に慌てている。あわあわしている。


莉央をからかっていると(いつもの仕返しだ!)、光と藤和君が戻ってきた。


「お待たせ~、帰りましょ」


授業中眠たくなるとか、充分寝てるだろとか、それなのに身長は伸びませんねとか。

そんなことを話しながら、

五人で校門まで歩いていく。


このメンバーだと、いつも私がいじられるのよね……


「それじゃ、また明日~」


「ばいばーい」


校門で別れた後。

私たちは莉央たちと反対の方向へ向かって歩くも、莉央たちが気になって仕方ない。

チラチラ後ろを気にしながら歩いているので、光から不審に思われる。


「さっきからどうした?あいつらの方ばっかみて」


「ねぇ藤和君って好きな人いるの」


「ちょっ、照葉直球すぎ…!」


光が硬直している。


少しの沈黙の後、光が口を開いた。


「……お前、悠馬が好きだったんだな」


「え!?違うけど!?」


あくまで私の予想だけど……と、光にさっきまでのことを話す。


「……恋愛として好きかどうかは分からんが、少なくとも友達としては好きだと思う」


というのが、光の答えだった。


「まぁそうだよね……私たちも決めつけるのが早かったかも」


と、彩ちゃん。


確かに、今回のことだけじゃ決めつけるのは

あまりにも早い。


「じゃあ、私はここで」


「うん、またね」


彩ちゃんと別れ、光と並んで歩く。

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