第4話 放課後

「照ちゃ~ん起きて~」


「てるてる先輩」


「照葉生きてるかな」



皆が私を呼ぶ声が聞こえる。

でも待って……

今イチゴとホイップのシュークリームを食べてる所だから……

つぶれそうなくらいに柔らかい、かつサクサクな、絶妙な食感のシュークリームを、いざ口の中へ…………




ベシッ




「いてっ」


後頭部に痛みが。


私は目をしばたかせながら顔を上げる。

目の前には、右手に数学の問題集を丸めて持った光が……


「照ちゃん、おはよう?」


「こんにちはが正しいわね。ったく、照葉はどこでも寝るんだから……」


後ろには呆れた顔をした彩ちゃんと、苦笑いをしている莉央が。


「ふぁ……私、寝ちゃってたの?」


「そうだ。帰りの会が終わって10分経った。……つーかお前、帰りの会中も寝てただろ」


光がなんかぶつぶつ言ってる。


「あーでも私、さっきまでいい夢を見てたのよ。……なのに光に起こされた」


「は?俺に文句言うな。そんまま寝かせてたら見回りの先生来るまで寝てただろ」


「馬鹿にしないで。海老グラタンを目の前に置いてくれたら匂いで起きる自信があるわ」


「お前を起こす為にグラタンなんて買わねぇよ。てかそんな自信いらねぇ」


「あーもー二人とも静かにー」


彩ちゃんが止めに入る。

いつもの事なので、皆気にした様子もなく、照ちゃん起きたなら帰ろう とか

光が黒板に《照葉の精神年齢は五歳並》とか

書いたりして。失礼な。


「ほらほら照ちゃん」


「準備準備」


彩ちゃんと莉央が鞄やら水筒やらを持ってきてくれた。


「あ、ありがと二人とも」


私は適当に教科書や筆箱を鞄につめこむ。


「それにしても、てるてる先輩はすごいよ。帰りの会の途中で寝れるのって、てるてる先輩くらいだと思うよ」


さらっと誉め言葉風に嫌味を言ってのけたのは、藤和悠馬ふじわゆうまという男。

クラスメイトで、光と仲がいいため、私もよく話す男子の一人。

端正な顔立ちで色白。見かけは女性にも劣らない、しとやかさな様なものがある。

まぁ、実態はさらっと嫌味を言ってのける

毒舌君であり、私のことをてるてる先輩と呼んでくる、ちょっと変わり者。


「私は眠気に弱いだけ。その他では強いわよ」


例えば大食いとか腕相撲とか口喧嘩とか……


「どうせ腕力と喧嘩と大食いとかだろ。ただの食い意地の張った暴力女じゃねぇか……っ」


「光うるさい」


そんなネガティブ思考で生きてると、

人生損するわよっ!



「照葉、早く部活行こ」


「あ、うん」


そして、すたこらさっさと教室を出る。


「じゃあね光!また明日~!」


「ん」


「分かってると思うけど、その黒板の超絶失礼な落書き、ちゃんと消してよね」


「分かってる」


そして前を行く彩ちゃんと莉央を追いかける。

私達三人は同じ部活に所属している。

ちょっと……いや、かなり変わった部活だけれど。


でも、だって仕方がない。この私が作った部活なんだから。!

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