大好きです

「私は、君のこと――」

「・・・」


 君がじっと私の方を見てる。恥ずかしいけど、目は逸らさずに伝える。


「ううん、私も君のこと、だ、大好きですっ!」

「…っ」


 君が息をのむ。何度目かの沈黙が、ふたりを包む。その空気に耐えられなくなって、私は視線をそらした。雨の音が聞こえなくなっている。雨がやんだんだ。


「あ、雨やんだし、そろそろ帰らない…?」


 私は君の方を見ずにそう言って、ドアに向かう。と、ぐっと腕を掴まれて、引き寄せられた。温かいが私を包む。


「逃げないでください、先輩」

「ひゃ…」


 耳元で君の声が聞こえて、ようやく抱きしめられている、と分かった。心臓が、最高速度で鼓動を刻む。後ろを見ると、君の瞳と至近距離で目線が合う。君はにこ、と微笑む。


「一緒に帰りましょ?」

「う、ん」

「…」

「…」

「…手、繋いでいいですか」

「い、いいいいよっ?」


 空には虹が出ていて、隣には君がいる。こんなに幸せで楽しい帰り道は、初めてだと思った。


 ねぇ。ずっと、このままでいられたらいいのにね。

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雨の日のこと。 彩夏 @ayaka9232

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