運命の人

「僕は――」


 君が告げるのを、私はドキドキしながら待った。恥ずかしくてまだ君の方を向けなくて、窓の外を眺める。


「僕は、ある人に出逢えたこと、です」

「ある人?」


 私はそう問いかけて――後悔した。思わず振り向いた先にいた君の顔を見て。

すごく、照れくさそうにはにかんでいた君の顔を、見て。胸がズキン、と痛む。


「えっと・・・言いにくいんですけど。――好きな人、なんです」

「そ・・・なんだ」

「はい」


 声は掠れて、君に届いたか分からない。でも、返事があったから聞こえていたことだけは分かった。


 急に疲労感を感じて、私は近くにあったパイプ椅子に座る。君が「先輩?」といいながら横に座った。私は顔を見られないように俯く。


「・・・誰?」

「え?」

「君の、好きな人って・・・誰?」


 私がこんなこと聞いちゃダメなのに。口が勝手に動いて、君に聞いている。


 ごめんね。これだけ聞いたら、もう忘れるから。この気持ちを――


「僕の好きな人は、明るくて素直で照れ屋で、優しい人」

「そうじゃ、なくて。誰か、名前教えて」

「ええっ!?」


 君が戸惑ってる。「恥ずかしいですよ・・・」って。ちらと見ると、その顔は真っ赤。私は君を見上げて――

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