雨の日のこと。

彩夏

運命

「ねぇ、君は運命って信じてる?」


 突然先輩が、そんなことを聞いてきた。ふたりきりの広い部屋を歩いていた彼女は、くるっと目の前で立ち止まり、僕の顔を覗き込む。


「まぁ…はい。信じてますかね」


 僕がそう答えると、先輩は「そっか」と呟いて俯いた。ふたりの間に、静寂が落ちる。窓の外から、強く叩きつける雨の音が聞こえる。


「じゃあ・・・運命って、どんなのだと思う?」

「えっと・・・」


 僕は狼狽える。そんなこと急に言われても、分からない。そんな僕に気づいたのか、先輩が口を開いた。


「私はね、君とここにいること・・・かな」

「!」

「・・・・・君は?」


 恥ずかしそうに先輩が思う「運命」を告げる。照れ隠しのように、そっぽを向く。赤くなった耳が見えた。


 僕は先輩の問いかけの答えを考えて考えて――そして、告げた。


「僕は――」

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