第4話 僕は僕以外になりたい。

僕は君が憎い。


君は気づいていると思うけど、「僕」は君のもう1人の人格だ。

今、君が読んでいるこの手紙もこの部屋で、君のこの手で、いつも愛用しているこの万年筆で書いているんだよ。

そう言ってもそんなに驚かないだろ?


だって僕の存在は君が作り出したのだから。


だから僕は君が憎い。


君には、「僕」という逃げ道があった。


でも、僕には「僕」として生きる以外選択肢はなかった。

うんざりだった。

毎日、毎日あの人の顔色を伺って生活する日々は。


15歳のあの日まで、山口和樹という人物の中身は僕だった。

たまにひょっこり君は現れて、すぐにいなくなってしまった。


本当に君はずるい。

ズルイ。

ズルイ。

ズルイ。

僕は君が大嫌いだ。

辛い記憶は全部僕に背負わせて、君は僕の苦悩を知らず、それはそれは幸せだっただろう?


僕は君が「僕」を作り出したように僕以外の存在を僕の中に取り入れようとした。


11歳の頃、同じクラスだったゆっきーに僕は憧れていた。石井ゆきのちゃん。


クラスの人気者だった。

いつも休み時間になるとゆっきーの周りには沢山の人が彼女の周りを囲っていた。


僕はゆっきーになりたかった。

ゆっきーになるにはどうしたらいいのか、考えた。


そして、僕はその日から学校帰りにゆっきーを尾行しはじめた。


<まちだ>

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僕は僕以外にはなれない 美郷椿 @manami1129

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