山形に来て、思う。

山形に来ています。

ここは、夫のM夫くんの両親の出身地。つまり、たまき家のルーツがあるところです。

結婚して初めて、たまき家のお墓参りもしました。


M夫くんの両親がなぜ今ここにいないのか、いや、結婚以来、二度と故郷に帰ることがなかったのか。


実は、二人は駆け落ちしたんですねー。


お義母さん側の誰かに結婚を反対されたらしいです。


当時としては珍しく、二人は酒場で出会ったそうです。

そもそも、女性が一人でお酒を飲みに行くなんて、ほとんど考えられない時代。

そこで女優さんみたいにかわいらしい感じの美人だったお義母さんに、お義父さんが一目惚れして猛アタック。お義母さんの方は最初は適当になしていたけど、その熱にあてられてるうちに、最後はラブラブになったようです。


そんな剛胆な二人なので、さっぱりしていて、合理的で、やさしくて、息子が結婚しなくても、いいトシしてから勝手に結婚を決めても、孫の顔を拝めなくても、一切急かしたり文句を言ったりせず、いいトシの息子よりさらに年上の私も温かく迎え入れてくれました。


結婚する前まで、さんざん女友だちたちから聞かされていた嫁姑のいざこざを、私は今のところ経験してません。

至らない嫁なので、本当は内心いろいろあるのかもしれません。だとしたら、少しもそう思わせない自然な気遣いをしてくれてるってことですね。

いずれにしても、頭が下がりますし、感謝もしてます。

至らなくてごめんなさい。それと、孫を抱かせてあげられなくて、すみません。


そんな二人の武勇伝、じゃないけど、私が「らしいな」と思ったのは、住んでる団地が瑕疵物件だったってこと。

団地自体は立地が便利な人気の物件で、本来なら抽選の競争率が高いのに、その部屋には3人しか申し込まず、見事当選。

ちなみに、居間の鴨居で首○り、だそうです。


最初はビビったけれど、二人があまりにも気にしてなくて、むしろ当たってラッキーって感じで笑ってるので、すぐに私も気にならなくなりました。

そうじゃなきゃ、本当は私もメチャメチャ気にする方なんだけど。


お義父さんは、私たちが結婚後、数年で亡くなりました。早朝連絡が来たのだけど、その日私たちはちょうど旅行に行くことになっていて、急きょ最初の二日間の予定をキャンセル。駆けつけました。


どうして二日だけのキャンセルで済んだかと言うと、お葬式がなかったのです。

本人の遺志によって、大学に献体することになってました。


葬儀会場の控え室みたいなところで、送り人の方が遺体をきれいに正装させてくれて、私たちは取り囲むように座って見守ってました。

M夫くんは自称「情が薄い」人なせいか淡々としていて、ほかの兄弟も次男のお嫁さんもお義母さんも取り立てて泣いてるようには見えない中、私が一番泣いてました。


最後は迎えの車が来て、私たちはそれに乗せられていくご遺体を見送っただけです。


支度ができた時、お義母さんがふと立ち上がって、お義父さんの頬を何度か撫でました。そして、その日初めて嗚咽を漏らしました。

たまらず、私もそこでさらに号泣、ほかのみんなももらい泣きしたようになりました。


私はむしろホッとしました。

誰も泣かない淡々とした雰囲気が、かえってさびしい気がしてたので。


M夫くんがあとで、「母があんなに泣くと思わなかった」とぽつりと言ったのだけど、その言葉にも驚きました。それが普通だと思うんだけど(笑)


とにかく、そんな感じの一家です。

お義母さんは、その後、張り合いをなくしたような様子になって、心配でした。喧嘩はしていてもやっぱり愛していたのだと思うし、さびしいのでしょう。


駆け落ちまでして一緒になって、大変な時期を二人で乗り切って、その後は好きなことを思い切りやりながら三人の息子を育て上げ、海外生活などいろんなことを二人で経験して、絆の深さはいかばかりだったかと思います。


職業柄、お参りしたいという人多数だったため、後日、お別れの会を開きました。200人くらい集まりました。

酒豪でお酒にうるさかった人なので、そのへんのエピソードが披露され、みんなで笑ったり、懐かしんだり、とてもいい会でした。


私の方もだけど、たまき家も子供のいない人が多くて先細り。

両家とも少子化に拍車をかけてます。。。


私はたまき家の皆さんを見てると、この人たちの血をつないでいくことができなかった自分がマジで悔やまれてしょうがないのです。

グータラなだけじゃなくて、そこすらダメダメな嫁です。。。

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