32編

まさかとは思った。考えたくもなかった。

この結論に至ったのはプレデターと

戦い終えた後だった。


(まさか10年前にばぁちゃんが

亡くなったのは事故なんかじゃなくて

モンスターに襲われて

亡くなったのか⁉︎

そうだとしたら、ばぁちゃんは

この先も生き続けることになる…。

手を叩いて喜びたいところだが、

俺は歴史を変えちまった。

今まで俺達が生きてきた

17年間が無くなるんだ。)


「助けてくれてありがとねぇ。

貴方達が居なかったら、

今頃このババアは食われてたよ。

そんなしょげた顔して

私が助かったのが嬉しくないのかい?」

「いや、ばぁちゃんそうじゃないんだ…。」

「そうだよー。

おばあちゃんが助かったんだよ?

もっと喜ぼうよ!」 


美春は嬉しさのあまり、

さっき俺が忠告した事を

すっかり忘れているようだ。

「おばあちゃんが助かったんだし、

お兄ちゃんも私も

伝えたかった事伝えたんだから

10年越しの後悔は晴らせたんだよ?」

「そうなんだけど…。

後悔を晴らせてばぁちゃんが

助かったのは嬉しいんだけど…。」


「お嬢ちゃん、さっき2人が

私にかけてくれた言葉かい?

あれは心にみたねぇ。

一生かけても貴方達の言葉は

忘れないでこれからも孫達を

可愛がっていくよ。

今日はありがとね。貴方達も

気をつけて帰るんだよ。じゃあまたね。」


その言葉がばぁちゃんの

最期の言葉だった。

「また会う日」が来ることは

永遠に無かった。

「キャァァァァ!キキー!ドーン!」

ばぁちゃんは俺達と別れてすぐに

トラックにかれて亡くなった。

結局俺達が10年前にばぁちゃんが亡くなった

原因を取り払ってもばぁちゃんは10年前の

今日に死ぬ運命だったのだ。


「おばあちゃん!何で!何でなのよ!

せっかく助けたのに!」

「美春…。気持ちは痛いくらい分かるが、

歴史を変えようとした時点でばぁちゃんが

違う理由で亡くなる事は決まっていたんだ。

そうじゃないと、17歳の俺達は生きては

いられないんだ…。」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

美春の泣き叫ぶ声が辺りをこだまする。

俺達は10年越しの後悔は晴らせたが、

結局ばぁちゃんの死に対しては大きな

トラウマを残したままだったのである。

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