8.やるべきこと
––––そして話は冒頭へと戻る。
「ちょっと、スカート短くない……? やっぱり、あんまり似合わない、かも……」
想像していた以上に恥ずかしくて、思わず裾を引っ張る。
太股のあたりがスースーして落ち着かない。
「そんなことないって!」「大丈夫だよー」
と囃されて更に顔が熱くなる。
「みんな! 三時! 仕事についてー!」
受付を担当している子が廊下から声を掛ける。
「おっしゃ! がんばろー!」
「やってやろーじゃん!」
「竹下は今度こそクッキー焦がすなよ!」
「うるせー」
笑顔のクラスメート達が散り散りに持ち場へと戻っていく。
ここまできたらやるしかない。
そうだ。
出来ることをやるしかない。
きっと私の選択は間違っていない。
一生懸命やれば……この人たちとなら、なんとかなる。
なんとかできる。
「夕梨ちゃん」
ぽん、と急に肩に人の手が触れ、「ひゃっ」と思わず声を上げた。
下の名前でなんて呼ばれたことがなかったので、一間おいて更に驚いた。
「頑張ろうね。夕梨ちゃんならできるよ」
高い位置のポニーテールを鮮やかに揺らして、その少女––––もう一人のメイド––––は、親指を立てる。
夕梨は微かにこくん、と首を縦に振る。
それを見届けると彼女は入り口へと駆け寄り、教室になだれ込んでくる客を見事にさばいていく。
確か女子バスケ部のエースだったはずだ。
あんな風になりたいなぁ。
人気があって、明るくて、頼りがいがある。
「よしっ」
ひとり小さく掛け声を掛けて、彼女に続いた。
やりたい、なりたい、があるなら、努力しなくてどうする。
佐田––––––––きっと私も、箱庭から出てみせる。
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