第8話
老人は、闇の中をさまよった。
――私は、とり残されたのだ。
彼の言ったように・・・。しかし、それを認めたくなかった。老人の心の中で、彼の言葉が何度も何度も繰り返された。
あなたはあそこへ行く勇気がなかったんだ。
そうかもしれない。
みんな死んでいった。自分一人がいつもとり残されて。
彼は正しい。いや、それとも・・・。
不意に、鳥の声が聞こえた。
闇が・・・変化している。
鳥たちの声が、そこここで聞こえ始め、それは、次第に強く、高く、大きく響きだした。
闇が透明なものへと変わっていく。それはもう、闇ではなかった。
「・・・光だ」
涙が、頬を伝って流れ落ちる。
闇の時代が、終わろうとしているのだ。
老人は、明け方の光に向かって両腕を高くさしあげる。新しい力が満ちてくるのがわかった。
ああ、光だ。これこそが本当の光なのだ。
老人は微笑む。暁光に照らされたその顔は、もはや老人ではない。
――さあ、行こう!
彼は呼びかけた。彼の新しい仲間たち。光の中で、今、産まれた子供たちが一斉に顔を上げる。まだ飛び立つことを知らない子供たちの頭上を、彼は笑いながら、低く飛んだ。幼い子供たちは歓喜する。彼の真似をして、羽ばたきを始めた。彼は微笑む。
明るい朝の光を浴びて、小さな虫が一匹、青空に向かって飛び立った。それは、眩しい太陽の光に吸い込まれ、たちまちのうちに見えなくなってしまった。 おわり
闇、そして光 ある☆ふぁるど @ryuetto23
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