第7話

 老人は、彼が光の中に吸い込まれ、一瞬にして消えていくのを目撃する。

 ――ああ、彼も、彼もまた同じ。

 何度となく見てきた。同じ光景を。何故だ。老人は思う。知っていたはずだ。気づいたはずだ。あの光は我々を殺す。我々を破滅させる光だと・・・。それなのに、何故? あれでは自殺と同じだ。死ぬとわかっていて飛び込むなんて。ふと、彼の最期の言葉が思い出された。

 ――あなたは、あそこへ行くことができなかった。その勇気がなかったんだ。

 違う。そんなはずはない、と老人は思った。あれは妖かしの光だったのだ。それを知っていたからこそ、自分は行かなかったのだ。

 それとも・・・? 老人は不安になる。

 ――だから、いつまでもそんな闇の中にいるんだ!

 それとも、彼が飛び込んだあの光、あの光こそ真の光だったのか? あの光の中にこそ、永遠の光の世界があったのではないだろうか。

「違う! そんなはずはない!」

 老人は叫んだ。しかし、その声はやがて、弱々しいものとなった。

「わからない・・・」

 老人はうなだれた。深い哀しみが、老人の心を満たしていった。

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